4・10原子力規制委会見
今年元旦に起きた能登半島地震で北陸電力志賀原発の変圧器にトラブルが生じた。変圧器の配管が破壊れ、冷却用の油が漏出した。送電線の一部が使えなくなった。電力供給が滞ると炉心を冷やすための水の冷却が出来なくなりメルトダウンの恐れがある。
地震発生ののちに性能が優れた変圧器が入手可能であることが分かり、原子力規制委員会の山中伸介委員長の2024年4月10日(水)の定例記者会見ではこの点について質問があった。
「今のところ、今のとおり壊れてしまうことが前提での規制しかかけない、通常の産業レベルのものでしか規制では求めない」となっているが、「新たな知見に基づいて、より厳しいクラスにも対応できる変圧器を求める、規制に入れるという考えはないか」。
これに対して、山中委員長は「変圧器に対して何か規制を強化するということは、個人的には必要ないというふうに思っています」。
「能登半島の詳細な結果が報告されて、また委員会で議論することになるかもしれませんが、個人的に変圧器だけを何か要求を上げるということは必要があるというふうには考えていません」。
解体廃棄物の再利用に関して
一方、福井県は、複数の原子力発電所の解体廃棄物などのうち再利用しようとするもの(クリアランス対象物)を、新たに設立する事業主体が受け入れて除染・溶融・放射能測定などを一拠点で集中的に行って基準を満たしたら再利用することを、事業化すべく調査を進めている。
この事業化を視野に入れた福井県の調査について資源エネルギー庁、福井県および同県に拠点を拠点を持つ3社ー関西電力、日本原子力発電、日本原子力研究開発機構ーとの間でこれまで3回の意見交換会(2023年7月31日、10月11日、2024年2月5日)があり、結果が報告された。
同日の原子力規制員会会合で、原子力規制庁の黒川陽一郎・原子力規制部原子力規制企画課長は廃棄物の処理が進めばリスクを下げることにつながるとの考え方を示し、「規制当局としても廃棄物処理を円滑に進めるための仕組みがあってもよいと考えている」と話した。
黒川課長は現行の審査基準は溶融を前提としていないと話した。
山中委員長の会見では、この意見交換会について多くの質問がなされた。
まず、論点である受け入れ物の「放射性物質の濃度」や「希釈、混合の判断」、「均一化」、「除染」についてどう考えるかによっては「プロセスに対する基準規則というのを少し追加する必要がある」かもしれないし、あるいは「現行の基準の中で、審査の中で確認していく方法もあるかもと思います」と山中委員長は話した。
そのうえで「原子力規制庁に方針を出してもらい規制委で改めて議論することになるだろう」との見通しを示した。
放射能物質の濃度制限は変わらない!?
ただ山中委員長は個人的見解だとしつつ「クリアランス推定物を、溶解して固めたものをクリアランスの確認するという、こういうプロセス上、何か技術上ものすごく何か大きな問題があるとは思っていません」と述べた。
黒川課長によると、ドイツの例からすると溶融によってコバルトは残るが、セシウムなどはスラグやダストに移行するという。
スラグとは、金属が溶融によって分離された鉱石母岩の鉱物成分などを含む物質のこと。溶融で出てくるスラグは各発電所に返却するという。
記者から現在のクリアランスはセシウムでいうと1キログラムあたり100ベクレルという放射性物質の濃度制限があるがこれは変わらないのかとの質問が出て、山中委員長は「それぞれの濃度・・・の総和が1以下であるという、そういう条件はもう変わりません」と答えた。
この福井県のクリアランス事業が廃炉作業などとの関連でどのような意義があるかと問われて、山中委員長は規制委は「安全上、規制上の検討をするため」に意見交換をして論点の明確化をしただけと述べた。