創建千二百年特別展「神護寺」
神護寺。京都市北西部・高雄に位置し、紅葉の名所として知られる。また円盤状に焼かれた「かわらけ」を谷に投げて吉凶を占う「かわらけ投げ」でも知られる今日の人気観光スポットだが、最澄や空海といった名僧たちを招き独自の発展をした日本仏教史においても極めて重要な寺である。
創建1200年と空海生誕1250年を記念して、寺宝の数々を紹介する特別展「神護寺-空海と真言密教のはじまり」が2024年7月17日(水)から9月8日(日)まで東京国立博物館・平成館(東京都台東区上野公園13-9)で開催される。
本展は、空海と真言密教のはじまりの地、神護寺に伝わる寺宝を紹介するまたとない機会となる。平安初期彫刻の最高傑作とされる国宝本尊「薬師如来立像」を寺外で初公開する。また、およそ230年ぶりの修復を終えた国宝「両界曼荼羅(高雄曼荼羅)」などが展示される。
さらには、空海の後を継いだ真済(しんさい)の代に安置された国宝五大虚空蔵菩薩坐像は、日本でつくられた作例のうち、五体が揃う現存最古のものだ。仁明(にんみょう)天皇御願とされ、鎮護国家が願われた。
寺外で五体そろって公開されるのは初めてとなる。
神護寺の公式ホームページによると、平安遷都を提唱した和気清麻呂が国家安泰を祈願して河内に神護寺、ほぼ同時期に山城に私寺として高雄山寺を建立した。高雄山寺は海抜900メートル以上の愛宕五寺のひとつといわれ、山岳修行を志す僧の道場として建てられたと考えられている。
清麻呂の没後、高雄山寺の境内に清麻呂の墓が祀られ、和気氏の菩提寺としての性格を強めたが、清麻呂の子息たちは亡父の遺志を継ぎ、最澄、空海を相次いで高雄山寺に招き、仏教界に新風を吹き込んだ。
最澄は高雄山寺で法華経の講演を行った後、唐に渡った。また、空海は留学生として最澄とともに入唐する。空海は唐で密教を学んで帰国した後一年して、京都に入ることが許されて、高雄山寺に招かれた。
824年、神願寺と高雄山寺が合併し、寺名を神護国祚真言寺(神護寺)と改めて、一切を空海に付嘱し、それ以後真言宗として今日に至る。 神護寺は最澄、空海の活躍があってその名を上げたが、994年と1149年の2度の火災にあい,鳥羽法皇の怒りに触れ全山壊滅の状態となった。
わずかに本尊薬師如来を残すのみであった惨状となった神護寺。時間はかかったものの、上覚や明恵といった徳の高い弟子たちに恵まれてもともとの規模以上の復興がなされた。その後も兵火や明治時代の廃仏毀釈といった弾圧にも法灯を消すことがなく護持している。
今展は全5章から成る。
〇第1章「神護寺と高雄曼荼羅」
〇第2章「神護寺経と釈迦如来蔵―平安貴族の祈りと美意識」
〇第3章「神護寺の隆盛」
〇第4章「古典としての神護寺宝物」
〇第5章「神護寺の彫刻」
開館時間は午前9時半から午後5時(金曜・土曜日は午後7時まで。入館は閉館の30分前まで)。休館日は月曜日(ただし、8月12日は開館)、8月13日(火)。問い合わせは050-5541-8600(ハローダイヤル)。観覧料などの詳細は展覧会公式サイトなどで公表するー https://tsumugu.yomiuri.co.jp/jingoji/