8・28原子力規制委会見
東京電力福島第一原発2号機の燃料デブリの試験的取り出しが初歩的ミスによって中断・延期されたが、原子力規制委員会の山中伸介委員長は2024年8月28日(水)の定例会見で、この失敗について「東京電力に対する国民の怒りですとか、特に周辺住民の方の本当にデブリを取り出せるのかと、そういう不安があるのを私も感じている」と述べた。
それら怒りや不安を「私も十分理解できる」。
燃料デブリの回収に使う「テレスコ式」という装置は複数のパイプをつなげて最大で20メートル超伸びる釣りざおのようになっており、原子炉の底に向かって3-4メートル、先端のカギ状の器具を垂らして、それでデブリを採取することになっている。
しかし、8月22日(木)に一旦は試験的採取に着手したものの、装置のパイプ部分を機械で押し込む際に、パイプの順番(種類)を間違えるという「初歩的なミス」で試験的採取の中断が決まっていた。
山中委員長はいう、規制委員会としては「10年後のサイト全体のリスクを見通すことが出来て、そこに至るまでのリスク低減のプログラムを提案させていただいたところで、デブリ取り出しはあくまでも一つのプログラムであって、次のデブリの大規模取り出しに向けて技術を開発して経験積んでもらう第一歩だと認識している。
そのうえで、例えば「作業員の被爆とか環境に放射性物質が拡散するとかいうようなリスク」が考えられる時には規制委員会として審査をするが、部品のつけ具合とかプロセスの進行がどうとかいう「細かいことで安全に関わらないことであれば我々も物申すことはない」。
デブリとは溶融した燃料が金属などと交じり合ったもの。福島第一原発の1~3号機には880トンのデブリがあると推計されている。このデブリの放射線量は極めて高いことからリスクが高く、今回も取り出せるとしても量はわずか数グラムつまり耳かき一杯程度だという。
スケジュールありきでない
また、青森県の地元紙「デーリー東北」の記者から、日本原燃が使用済み核燃料の再処理工場(同県六ケ所村)の完成目標時期をこれまでの2024年9月末から延期すると県に報告した件について質問があった。
昨日(8月27日)の審査会合で日本原燃から原子力規制庁に対して、そうしたスケジュールの延期が提案されたという。
山中委員長は「スケジュールありきでないということを規制庁職員からきっちりと釘を刺したうえで、引き続き審査を厳正に進めてほしいと指示しているところ。スケジュールありきでないとお考え頂ければと思います」とあくまでも日本原燃が想定するスケジュールに過ぎないと明確に示した。
再処理工場は使用済み核燃料から再利用可能なウランとプルトニウムを取り出す施設。これは国の「核燃料サイクル」政策の中核をなすものだ。
今回で、1993年の着工以来27回目の延期となる。
大きな判断で決断に迷いはなかった
また原子力規制委員会は同日、日本原子力発電の敦賀原発2号機(福井県)が再稼働を目指して活断層についての主張を展開してきたが、原発の安全対策を定めた「新規制基準」に不適合だとする審査書案を了承した。
山中委員長は「大きな判断だった。決断に迷いはなかった」と話した。
日本原電の申請から10年も経っての判断となった点を問われて、山中委員長は「昨年まで8年弱の間に十分な審査が出来る状況になかった。異常な審査の状況だった」と述べた。
理由として「非常に多くの間違いやデータの書き換えなどで審査が出来る期間が非常に限られていた」という。
山中委員長らは8月2日に日本原電と意見交換を行ったが、同社は廃炉にする考えはなく、今後もK断層について継続して調査、分析したうえで再稼働への道筋をつけたい考えを明らかにしていた。
これについて「分析して頂いて(変更申請を)提出してもらうことを何ら否定するものではない」と山中委員長は述べた。
日本原電は2015年に2号機の審査を申請した。
規制委は、原子炉建屋の北側にあるK断層をめぐって、それが活断層かどうかという「活動性」と原子炉直下まで延びているかという「連続性」について審査し、K断層の活動性も連続性も否定できないと結論づけた。
今回の判断は、福島第一原発事故の翌2012年に新規制基準が施行されてから初めての不適合ということになる。