都の外苑アセス”究極の不正”
日本イコモスの石川幹子理事は2024年10月21日(月)、東京都の環境影響評価審議会が同日に神宮外苑の再開発に関して事業者が出した見直し案を事実上認めたことを「究極の不正行為」だとして強く非難した。
同委員会での環境影響評価(アセスメント)はこれで終了となり、10月中にも樹木の伐採が始まることとなった。
神宮外苑の再開発計画では、神宮球場と秩父宮ラグビー場の場所を入れ替えて建て替え、超高層ビル2棟を建設するなどとなっている。
これに対して100年超の多くの樹木が伐採されること、一つの群落としての神宮外苑の緑が破壊されることなどから大きな批判が巻き起こったことから、都は一旦、事業者に計画見直しを促した。
それを受けて事業者は今年9月9日に見直し案を公表、樹木の伐採本数を減らすなどの変更を発表していた。
日本イコモスは9月24日、10月9日、10月17日に記者会見を開いて、事業者の見直し案について様々な問題点を指摘し、都の環境影響評価審議会に対してフェアな審議を求めていた。
イチョウは健全か?
同審議会が受理した事業者の見直し案では「イチョウは健全」としているが日本イコモスは「保存緑地は日照が充分でなく、衰退してゆく」した。
移植を計画しているという秩父宮ラグビー場へのアプローチにある18本のイチョウの扱いについて言及がなかったと指摘。
また、「後日、群落調査を行う」というが、「そもそも、森林群落としての生態系は保存されていなく、再開発が進めばすべて破壊」されるし、この部分は貴重な「桜、ケヤキ、マテバシイ、ヒトツバタゴ等の植栽地」だと日本イコモスは強い懸念を表明していた。
さらには再開発によって生じるヒートアイランド現象によるイチョウの衰退への対応を行っておらず、再開発で地下杭40メートルが打ち込まれることで水循環が遮断されることへの考察もないとした。
また絵画館前の芝生広場も再開発され、ここで「いま、たくましく、美しく生育している巨樹が伐採される」と日本イコモスは懸念も表明していた。
日本イコモスでは都の環境影響評価審議会のこの対応に関しての声明あるいはプレスリリースを出すことを検討中だと石川理事は話している。
神宮外苑再開発は三井不動産、伊藤忠商事、日本スポーツ振興センター(JSC)および明治神宮が進めている。
東京都は2023年2月、再開発事業を認可した。
100年超などの樹木の大量伐採を含む再開発案への懸念などから、同9月、日本イコモスの上部団体であるパリのイコモス本部が計画の撤回を求める緊急声明「ヘリテージ・アラート」を発出した。
昨年末、東京都は計画の見直しを事実上求めた。
それを受けて、今年9月、事業者が見直し案を公表したところだった。
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