落語日記 今年の安寧を願う想いで賑わう初席
浅草演芸ホール 初席一部・二部
1月9日
この日が今年の落語初め。地元浅草演芸ホールの初席で、馬治師匠出演の二部にお邪魔してきた。客席の規制は最前列のみ使用禁止となっていて、全体では7割くらいの入り。初席の日曜日の昼、やはり客入りは例年より少ないと思われる。
昨年の落語初めは、1月16日に鈴本演芸場二之席昼の部の一之輔主任興行。当時は、東京都には二回目の緊急事態宣言が1月8日から発令されている最中。そして、鈴本演芸場を訪問した翌日に、鈴本演芸場と落語協会のHPとツイッターで衝撃的なニュースを見る。鈴本の楽屋で働いていた前座さんの一人が、新型コロナウイルスに感染していることが判明し、18日から二之席を中止するというもの。その後、出演者の感染も判明。昨年の今頃は、緊急事態宣言による客席の規制と来場者の減少に加えて、寄席でのクラスター発生により落語家が感染という、演芸界が大ピンチに陥っている時期であった。
昨年は、秋口から感染状況が治まってきてはいたが、寄席や落語会も休止に追い込まれ、演者も寄席も危機的状況を味わった一年であった。
今年に入り、オミクロン株という感染力の強い新種の感染が広がってきた状況になって、まだまだ予断を許さない状況に変わりはない。新種の変異株は重症化のリスクは少ないとも言われていて、少しは明るい状況ではあるが、終息に向かっていくのかどうか、まだまだ不安は残る。
寄席の初席というのは、通常の上席とは違う。寄席の世界のお祭りであり、顔見世興行というハレの高座でもある。歳の初めという節目を大切にする、演芸界の大切な祭礼の行事なのだ。
しかし、単に新春を寿ぐためだけに開催しているのではない。この節目の行事は、演芸界全体が本年の無事や繁栄を祈念するために開催しているものだと、私は勝手に解釈している。今年もコロナ禍という特殊な環境にある。そこで今年の初席という寄席の晴れやかな伝統行事は、その感染症による不安を払拭し、一日も早い日常が戻ることを、演者側も観客側も揃って願う場所となる。この日、初席に訪れた観客は皆そう思ったに違いない。落語ファンとしては、そう考えずにはいられないのだ。
浅草演芸ホールの客席に居て、何気ない長閑な高座を目にすることの有難さを痛感した。改めて願う。今年こそ、無事で平穏な日常が一日も早く戻ることを。
【一 部】
林家木久扇「彦六伝」 一部主任
途中入場
【二 部】
古今亭ぎん志「獅子舞講座」
桂文雀「学校寄席」
金原亭馬治「蟹と入れ歯」
のだゆき 音楽パフォ-マンス
春風亭柳朝「冷蔵庫で不倫」
五明楼玉の輔「噺家二世」
松旭斎美智・美登 マジック
柳家わさび「券売機女房」
橘家富蔵「三平小噺」
入船亭扇遊「二人は親子なのよ」
おしどり 漫才
林家彦いち「睨み合い」
仲入り
三遊亭歌る多・美るく「松づくし」
桂文楽「ペヤング」
橘家文蔵「色々な高座」
ロケット団 漫才
春風亭一朝「初天神」
三遊亭歌武蔵「支度部屋外伝」
柳家小満ん「馬のす」
アサダ二世 マジック
三遊亭金馬「異母姉弟」
林家木久蔵「木久扇伝」
林家あずみ 三味線漫談
三遊亭圓歌「やかん工事中」二部主任
初席二部と三部の間で入替え
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