写真を撮るようになったら絵も描けるようになった
20年ぶりに絵の具を買い替えた。
コンパクトに持ち運べる固形水彩が気になっていて、ウィンザーアンドニュートン・コットマンのハーフパンセットが値引きになっていたので購入してみた。
水彩絵の具は長年、ホルベインのチューブタイプをパレットに出して固めて使うスタイル。
これはこれで愛用していたし良かったんだけど、パレットを広げるとちょっと場所をとるのと、流石に20年も経つと絵の具が古くなってきて、溶けが悪い感じがしていた。チューブに残っている絵の具もカチカチ…
新しい絵の具セットは2000円くらいだし、とりあえず買ってみよ〜で買ってみたら、とても楽しかった。
ハーフパンは、ハーフというだけあって小さい絵の具だけど、水彩でちょっとスケッチするには十分な大きさ、ちょっと、ちょこっと描きたいんやっていう自分にはちょうどよかった。
何を描こうかな〜で、描き出したのが、自分で紡いだ糸の絵。写真はたくさん撮っていたんだけど、そういえば絵にも描きたいと思っていたんだよ。
自分で作ったものをさらに自分でスケッチするの、三段仕込みのミリンみたいだな。そういうのいいと思う。
作品としての糸の、グラビア的写真は普段からよく撮っているのだけど、使いかけの糸とか、糸の切れ端とか、いわゆる糸屑とか、写真に撮るにはちょっと違うんだよな、というモチーフが、水彩スケッチにするとなんかしっくりきた。
筆は、ステッドラーの水筆を選んでみた。
作業部屋の近くに水道がないので、小瓶に水を入れて、筆に注水しながら使っている。
これがすごく便利で、ちょっと描きたいだけの私には便利だ。
部屋がちょっと暗くて目が疲れるのがずっと悩みだったので、これを機にバルミューダのデスクライトも買ってみた。
色がすごくきれいに見えるようになった。
いい買い物だった。
糸を紡ぐ時にも手元が見やすくなった気がする。
水彩絵の具は、中学生の頃から受験対策で描き、高校時代も日本画のために描き、それでも自分ではこの世界では全く歯が立たないと思って挫折して、大学時代はちょろっと落書きのようなものを描くだけだった。
何を描いていいのかもわからなかった。
なんとなく、具象的なものは遠ざけて、抽象的な絵ばかり描いていた。自分の下手さが見えるのツライんよ。
今更、もっと好きなものをたくさん描けば良かったんだよな、と思う。
オーソドックスな技術で、好きなものを見たまま書けばいいんだ。
最近ずっと写真を楽しく撮っていて、好きなものを、見たまま撮ればいいって幡野広志さんも言ってて、それはそのまま、絵もそれでいいんだよなぁって、なんか、何十年も拗らせたままの呪いから解放された気持ち。
自分の好きなものは、下手でも、好きな部分への愛が滲む。