同じ景色を見ても、きっと。
夜桜を見に行った。
満開のピークはすでに一週間前で、ライトアップも終わっていた。
それでも、若者がまばらにいて
写真を撮っている。
川沿いを歩いていく。
光はポツポツある街灯のみ。
暗闇で、桜の色はほとんど見えない。
小さな橋の架かった場所に辿り着く。
スマートフォンを取り出す。
カメラから覗いた世界は、
別世界だった。
煌びやかな街灯。
月の光に反射する花びら。
これは単純に肉眼とカメラの機能差でしかない。
でも、私たちが何を見ようとして、
何を見ようとしていないのか、無意識にフィルターをかけていることを思い出させる。
頭の中に無数のフィルターがある。
目に映る景色が変わる。気付きも変わる。
行動が変わる。
例えば同じ空でも絵描きと気象学者の見え方はきっと、違うはずだ。
例えば同じ海でも釣人と詩人の見え方はきっと、違うはずだ。
例えば同じ星空でも夫婦と宇宙飛行士の見え方はきっと、違うはずだ。
今までの経験とか、思考とか、感情とか、
無数のパラメータでこの景色は脳内で再構築されている。
花びらが散っていく。
少し寂しく見えた、今年最後の桜。
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