2024 ツールド妻有旅行記①
大地の芸術祭 越後妻有(えちごつまり)アートトリエンナーレ。
新潟県十日町市および津南町、古くは妻有郷と呼ばれた地域で3年に一度開催される国際的な芸術祭である。
信濃川上流域として四方を山々に囲まれたこの地域全体(山に囲まれたドン詰まりから妻有となったらしい)を巨大な美術館と見立て、世界中のアーティストと地域住民が共同で3年に一度、この地で大規模な芸術祭を開催している。
2000年から開催されて8回目のトリエンナーレとして新潟、日本だけでなく世界的に注目を集める中、同地にて2006年からほぼ毎年開催されるあるイベントがある。
ツールド妻有。
建築家の伊藤嘉朗(いとうよしあき)さんによって企画された、越後妻有の里山や信濃川の岸辺を自転車で走るサイクリング・イベント。過酷な峠道をただひたすら登るか下るかしながらアート作品や建築作品などを楽しみながら、最大で走行距離120km、獲得標高2000m超の道を走るこのコースを走りながら芸術作品を堪能する余裕なんかあるわけないだろやめあら。
これは、そんなツールド妻有に今年2回目の参加を果たした記録である。
8月24日(土) 前日移動
・誕生日に出発
8/24、この日は自分の誕生日。
今日で38歳、もう完全にアラフォーな歳である。
太宰治はこの年齢で玉川上水へ入水自殺している。
芥川龍之介なんか35歳で亡くなった。
自分はいくつまで生きるのか。
生きていくだけなら生き易い世の中(今後どうなるかは全くわからないけど)だけれども、”どう生きるか”で迷ってしまう気がする。
その日生きることに必死なら生き方を悩むなんてことはあまり無い、生き残ることに必死なわけで結局は暇人の戯言なのかもしれない。
そうはいってもその戯言に生涯を費やすのもまた人なのかもしれない。
そんなことを朝起きてから考え明日の過酷なイベントから現実逃避しつつ、朝ごはんを食べる。
今日からツールド妻有参加のため十日町へ移動するので、食事のあと自転車や荷物の最終確認等準備を進める。
このイベントに参加するのは今年で2回目だ。
去年初めて参加した時は酷暑の中一泊二日の強行軍で向かい、初参加と猛暑もあってアート作品に触れる余裕もなくなんとか完走したものの、イベント翌日くたくたのヘロヘロになった状態で死んだ魚のような目をしながら仕事に向かったことを覚えている。
今年は去年の反省を活かし、26日月曜日までの2泊3日の予定で参加、初日と最終日に少しアート作品も見ていく予定だ。
イベント申込と宿泊予約を取った頃はすでに休職中だったのだが、申込時点では少し気分も上向いていて、ここまで休職期間を延ばすと考えていなかったので職場復帰しているものと想定して予約したが、実際はこれを書いている今時点も休んでいるのだから人生どうなるかわからないものである。
そんなこんなでイベント当日を半ニート状態で迎え、秋田・青森以来暑さを言い訳に長距離を走れていないという不安なコンディションで向かうことになった。
体重と体力、そして今後に一抹の不安を覚えながら、車に自転車と旅行荷物を積載し、いい旅になることを祈りつつ出発する。
・へぎ蕎麦とうどんと天ぷらと
自宅から出発すること約2時間、お昼頃に十日町に到着。
今回も同行してくれた妻のリクエストで蕎麦を食べに行くことに。
十日町はへぎ蕎麦(”へぎ”という器に盛られた蕎麦のこと)が有名で、全国にも名の知れた蕎麦屋さん、小嶋屋や由屋もあるが、今回は国道253号線沿い、八箇峠へと向かう道の途中にある「そば処まるにし」さんへ。
雪だるま型の看板が特徴的なお店、何気に今回が初来店である。
今まで仕事やプライベートなどで何度かお店の前を通ったことはあるが、行ったことはなかったのだ。
看板に『華相へぎ(相へぎはへぎに蕎麦とうどんを相盛にしたもののこと、華へぎはそば、うどんの上に海苔を載せたもののことをいう)』とある通り、このお店は蕎麦とうどんの相盛が名物らしい。
店内は広い座敷席が3、4つにテーブル席が4つほどでなかなか広い。
メニューにはへぎそばをはじめ、なべやきそばやかけそば、カレーそばなど豊富なメニューがあったが、今回は相へぎと天ぷら盛り合わせを注文。
へぎ蕎麦、相へぎは2人前から注文出来たみたいだが、メニューでは3人前からの料金で載っており、小嶋屋さんや由屋さんのイメージだと3人前で2人前くらいなものだと思い、3人前で注文。
今にして思えばこの時2人前にしておけばよかったかもしれない。
注文した後、初来店のため口コミをチェックしていた妻からかなり大盛の店らしいよ、と言われ少し身構えつつも楽観視していた我々の前に届いたのが下の相へぎと天ぷらである。
予想より少し、いやだいぶ多い。
天ぷら盛り合わせも大海老にしいたけ、かきあげ、キス天等々盛り沢山である。
大盛の蕎麦とうどんと天ぷらに圧倒されつつも恐る恐る食す。
蕎麦は珍しく丸い断面の蕎麦で、布海苔(ふのり)蕎麦特有のツルンとした喉越し良い蕎麦。
うどんは手打ちうどんらしく切り方がいい意味でまちまちでつゆがよく絡み、のど越しと食感がよい。
備え付けのレモン汁をうどんにかけて食べるとレモンの酸味でサッパリと食べられる。
食べ始める前は大盛に圧倒されていたが、美味しく食べ進めなんとか完食。
妻も満足してくれたみたいでひとまずほっとする。
※この時妻は少し体調を崩していてあまり食べられなかったのだ。
おいしいのにこの時あまり食べられなかったことを少し悔やんでいる模様。
そして妻が量を食べられない分、自分が2人前以上食べ進めることになっていたりする。
ただ、次に来たときは大人しく二人前でいい気がする、おなかが重い。。
こんな調子で明日自転車に乗れるのだろうかと思案しながらまるにしさんを出る。
とても美味しかったです、ご馳走様でした。
・前日受付完了、そして松代農舞台へ
まるにしさんを出て車で10分、20分ほど走り、ツールド妻有スタート地点である「ミオンなかさと」で前日受付を済ます。
会場はまだ設営準備の途中でスタート/ゴールの看板もまだ無い状態だったが、奥のテントでは前日受付に大勢のサイクリストが並んで受付を行っていた。
自分も列に並ぶこと数分、無事受付を済まして参加賞のサイクルジャージと手ぬぐい、焼き菓子をもらう。
ツールド妻有の特徴として、大地の芸術祭が開催されるトリエンナーレの年は参加賞として記念ジャージがもらえるのだ。
そのためトリエンナーレの年は大勢のサイクリストがお揃いの黄色いサイクルジャージで妻有地域を走り回る。
お揃いのサイクルジャージで大勢のサイクリストがアート作品を回る姿は、このイベントがサイクリングを通したアート作品巡りであると同時に、サイクリスト自身がまた一種のアート作品になるイベントでもあるのがこのイベントの魅力の一つなのだ。走っている最中そんな余裕が無いけど。
自分は去年から参加したので、今年初めて記念ジャージをもらうことが出来、その時点で参加申し込みしてよかったと感動する。
前日受付を済ませた時点で1時過ぎくらい、宿のチェックインまではまだ時間があったためまつだいの農舞台へ向かう。
走ること車で20分ほど、無事農舞台へ到着。
農舞台。
オランダの建築家グループが設計したフィールド・ミュージアム。
大地の芸術祭の重要な拠点のひとつで、この建物を中心に松代エリアに40作品ほどの芸術作品が展示されており、松代だけでも100作品以上のアート作品が存在する。
昨年のツールド妻有でもこの付近は走っているのだが自分の走力では農舞台のアート作品を見て廻れるほどの体力と時間的猶予が無く、またツール終了後すぐに帰ってしまったのでせっかくのアート作品をほとんど見ることが出来なかったのだ。
そんな心残りを解消すべく、今年は前日と翌日はアート作品巡りに時間を割きたかったのである。
というわけで農舞台にてアート作品を巡る。
有名な「棚田」や「廻転する不在」、「花咲ける妻有」のほか、かまぼこ倉庫がマトリョーシカのように並んだものや楽し気なカエルのオブジェがあり、なかなか興味深い。
芸術作品に囲まれて感動する反面、自己を見つめ、内省することも多い時間を過ごす。
農舞台周辺を散策した後、暑さから逃れるようにまつだいの道の駅に行き、コンビニでアイスを頬張る。
まつだいの道の駅はほくほく線松代駅と併設してあり、道の駅内は鉄道関連のオブジェやお土産も並ぶ。
アイスを食べ終えた後は本日の宿泊地へ向け、改めて車を十日町に向けて走らせる。
・ハヤマ荘で宿泊
十日町市のはずれ、丘の上にある「ハヤマ荘」に宿泊。
スタート地点である「ミオンなかさと」から近いからか、自分達以外もサイクリストが多数宿泊している模様。
チェックイン後、宿の車庫に案内してもらい自転車を置かせてもらう。
電話で予約を取った時、ちゃんと予約できているか不安だったが無事チェックイン出来て一安心。
口コミサイトでは色々心無いことも書かれていたが、自分たちが宿泊した部屋も、宿の食事も、お風呂もよく、何より宿の女将さんの人柄がよかった。
素朴で快適な環境で誕生日の夜を過ごさせてもらう。
ただ一つ失敗したとすれば、朝食は朝早くなので無いと思って自分は朝無しで予約をとっていたのだが、サイクリスト向けに明日は5時から朝食を準備していたらしい、知らなかったそんなの。
予約した時に教えてほしかったけど、来年予約するときに忘れずに朝食もお願いしようと思いつつ、明日に備えて早めに寝ることに。
明日は頑張って完走を目指す。
②へ続く
今回も軽く書くつもりが少し長くなってしまいそうなので、1日目、2日目、3日目の3本立てくらいでまとめようと思う。
次はツールド妻有本番を書く予定なので、今しばらくお待ちいただければ幸いである。
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