いまの日本社会の情景(Japanese Society Now)
2010年に日本のGDPが中国に抜かれて3位となったころ、産業界には「六重苦」があるからだといわれていました。2023年にはドイツに抜かれて世界4位となり、2025年にはインドに抜かれて5位になることが確実です。
GDPが伸び悩んでいる理由として、いまは「新・六重苦」があります。
1 円安、
2 地方の衰退、
3 少子高齢化
4 人手不足、
5 人材不足、
6 デジタル化の遅れ、
1の円安は明らかにアベノミクスの影響といえますから、日本銀行は難しいかじ取りを余儀なくされています。当分の間は、総裁のハンドルさばきを注視していきます。
2の地方の衰退を止めるためには、各地の文化(生活)インフラの向上を支援する必要があります。地方には先進国並みのハードとソフトのインフラ整備に十分な予算を配分しなくてはいけません。現在の首都圏に偏りすぎている施設と文化のインフラを修正すれば、地方は元気になります。上から目線の地方創生は十分ではありません。
3の少子高齢化のうち高齢化はいまの人口構成の結果ですから、今後も社会の高齢化は進みます。社会の高齢化は止められませんが、高齢化社会に対応することは可能です。高齢者が安心して暮らせるようにソフトインフラ(文化)の整備を推進すればいいのです。少子化社会はソフトインフラ(生活)を整備することにより改善が期待できます。高齢者と子供は社会が育てるのだという文化(生活)を応援することで、国民に勇気を与えることが大切です。
4の人手不足を改善するために、次の3点を提言します。
一点目は、全職場の仕事と手順の見直し(Audit)です。無意味で無駄な仕事を洗い出して仕事量を削減し、労働生産性をあげる必要があります。社会を運営する組織の責任者は、仕事量を減らす勇気が必要です。たとえば、社会運営の責任者が政策の明細を記録するように指示し、仕事量を増やすことなどは厳に慎まなければなりません。保身のために‘やってる感’をアピールされては、関係者が苦労します。
二点目は、日本の産業界は新しい技術の開発と導入を中心に発展してきましたが、‘労働生産性は全く向上しなかった’という事実を謙虚に受け止める必要があります。新しい技術(ハード)の導入では、労働生産性の改善は全く達成できませんでした。社会と組織の運営をこれまで通り続ける限り、労働生産性の向上は期待できません。労働生産性を改善して人手不足を補うためには、組織運営というソフトの技術の修正が不可欠です。
三点目は、人口が減少する社会にあっては、人手不足の解消のために外国人労働者に頼る必要性が増しています。外国から応援に来てもらえるように、日本の魅力を増やして外国人に選ばれる国になるような社会制度と運営が必要です。ソフトインフラ(生活)の整備は待ったなしです。
5の人材不足を改善するためには「人つくり」教育に投資して世界に通用する人材を育てることが求められています。最近の社会をみますと、あまりにもレベルが低いといわざるを得ないような出来事が多すぎます。教育の結果がいまの民度だとしたら、社会や組織の運営をする人材の不足は深刻です。「人つくり」は時間がかかりますが、いま始めれば遅すぎることはありません。
6のデジタル化の後れは、拙速で典型的な日本型の社会運営ともいえるマイナンバーカードの導入では解決しません。役所の書類からハンコがなくなっても、何も困らなかったように、無意味で無駄な仕事の洗い出しから始める必要があります。社会のデジタル化は国民の賛同が必要ですから、申請書類を扱う部署がデジタル化の先頭に立つ必要があります。民間では当たり前の書類のデジタル化が、役所の書類にできないわけはありません。
使いにくく責任回避のためのようなソフトを改善して、市民が使ってみて「これは便利だ」といえるような社会をめざすことが大切です。製造業が見たり、聞いたり、触ったりをとことん追求して「使ってみて便利」、「乗ってみて気持ちいい」、「食べておいしい」工業製品を世界の果てまで届けて「Japan as Number 1」といわれたように、利用する側(消費者)の利益を考慮した施策を導入するときです。
先進国脱落の危機を乗り越えるために、いまこそ「隗より始めよ」のときです。
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