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解散したバンドとか生きたいって気持ちとか

夕暮れ。解散したバンド「teto」のロゴが入ったタンブラーにコーヒーを入れて飲みながら、近所の小川沿いをとぼとぼ歩いた。甲府で買った紺色のスウェットに真っ黒なスカジャンを羽織って、下はウールのだるっとしたワイドパンツにVAN'Sのスニーカー。なんだかガキっぽい格好だったけど、普段働いている時のスーツ姿よりはよっぽど自分の肌に合うような気がした。

仕事始めから数日働いて、それから再びの休日。エンジンがうまくかからないまま中間地点に到着してしまったような感じがするけど、まあ休みは好きだからなんでもいいや。最近は眠りが深いのか変な夢も見ないし、ごはんもちゃんと美味しいって感じるし、恋人を心配させたくないと思えるようになった。それでもどこか揺らいでしまう自分もいるので、内面のことはあまり深く考えず、ただぼんやりするだけの時間が僕には必要だった。

山あいが夕焼けに染まる。空は水色で、僕のいちばん好きな色だ。

夏にはぼうぼうと道端に生えていた雑草も今は枯れ、その隙間を縫うように鴨たちがトコトコと歩いている。「雑草という草はない」とおっしゃったのは確か昭和天皇だけど、彼がためらいなくまとめて表現する「国民」なんて人間も、ほんとはいないと思う。だからなんだと言うわけでもないけど。天皇陛下のことは好きでも嫌いでもない。

この列島に住む1億数千万の日本国民一人ひとりにも名前があって、川べりでぐわーと鳴いてみせる鴨たちにもマガモだのカルガモだのいろんな名前がある。僕の大好きなバンドだった「teto」はメンバーの入れ替えとともに名前を「the dadadadys」に変えた。そのボーカル小池貞利は今も昔と変わらずライブハウスでハチャメチャやっている。僕は彼らが「teto」だった頃に出した曲を聞いてグッズのタンブラーを片手に歩きながら、次の「the dadadadys」のライブはいつだろう、とか考えてみる。

SNSを見ると未だにtetoのことを思い出してはぼやぼやしている人たちがいて、そんな彼らに「過去を振り返るな」と露骨に怒っているひともいる。僕はどちらの側にもつきたくなくて、でもどこかで腹が立つような気はしていて、というかtetoを終わらせるつもりなんてさらさらなくて、こうして一人でいる時もtetoのことを考えている。

バンドとしては終わってしまったのかもしれないけど、僕はこれからもtetoの音楽とともにありたい。こういう「これから」に向けた感情が、「生きたい」ということなのだろうか。死にたい死にたいと嘆く人はたくさんいるけれど、生きたいと叫ぶ人は病人ぐらいしかいない。昔はそんな感情はないんだと思っていたけど、今なら叫ぶ必要がないからだと確信できる。僕は今、この人生上で少し幸せな方にいるのかもしれないな。だからこんな腑抜けた文章を書くことができるのかもしれないね。

散歩終わり、お腹が減って、ごはんを炊いたのにパスタを茹でてしまった。どちらもドカ食いするしかない。

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