「第34話」「第35話」「第36話」
第34話 赤い糸
癌の闘病中にモルヒネを摂取し始めてから赤い糸が見えるようになった。
運命の人とつながっているのか? と考えたが、赤い糸は体から何本も出ていて、中にはその先で枝分かれしている。
そばにあった机に触れると、机から赤い糸が出ているのが見えるようになる。その糸をつかむとその机を搬入した人が見える。そして港で荷下ろしをしている人、船を運航する人。トラックから組み立て工場で働く人。これは中国人かな。木を加工する人から、木を運ぶ人、最後にはカナダの森林の木こりさんまで順々につながって見えた。
今着ているパジャマはベトナムの女性が作り、その糸は中国の綿畑のおじさんが収穫している。
この食器は千葉のプラスティック成形工場から。材料の石油をサウジアラビアのインド人が採掘して、韓国の船でペルー人が運んだ。その船のエンジンはイギリス人が作った。
食べているサーモンはノルウェーの漁師が捕ったものをデンマーク人が作った機械で加工し、その機械の材料の金属はバーレーン人が採取したものだ。
すべてのものが世界中の人々につながっている。
ここから先は
1,742字
¥ 100
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?