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小説の集い。

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ゾッとするほどつまらない短い物語の集まりです。内容がだいぶカオスな話もありますが、ご容赦ください。
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#短編小説

読書感想文に抗う吉田君。 (短編小説)

読書感想文という悪しき慣習について 4年2組  吉田吉男 私は読書感想文が大嫌いである。 この一言に尽きる。どう足掻いたところで大嫌いである。 何故、読書感想文などというはた迷惑な宿題が、夏休みという名の楽園に降り注ぐのであろうか。実に愚かである。 毎夏のごとく、私はこの読書感想文という名の悪しき慣習に苦しめられ、髪をかきむしり泣き喚くという醜態を晒すことになる。 醜態を晒す私自身も、その醜態を視界に入れなければならない家族の皆様も、皆がひどく不快な感情に苛まれる

『ピサの斜塔、斜め45度事件』 短編小説

「ここで速報です。あのイタリアにある有名な建築物“ピサの斜塔”が、つい先ほど突然45度まで傾いてしまったようです。現場付近では入場規制が行われているようです。おっと、中継が繋がるようですので繋いでみましょう。現場の斜木さん」 『はい、現場の斜木です。私はたまたまイタリアを優雅に旅行中だったのですが、ピサの斜塔が45度まで傾いたということで、リポーター魂に火がつき、休暇そっちのけで現在中継を繋いでおります』 「まじっすか。そりゃどうもお疲れ様でございます。入場規制が行われて

友人Xの逆鱗。 (短編小説)

私には昔から仲の良い友人が一人だけいる。私にとって唯一の友人と言っても過言ではない存在である。 だが先日、そんな友人と一悶着あった。今回はその一件について書き記したいと思う。ここでは仮にその友人を「X」と呼ぶことにする。 Xはとても優しい日本の男である。言動や行動、雰囲気など全てが優しさに包まれており、怒った姿を一度も見たことがない。まさに優しさの権化のような存在である。 私は小学生の時、友人が一人もおらず少々寂しい思いを抱いていた。そんなときに、Xは唯一私に話しかけて