思い出の味・思い出の日々
両親が健在のころ、いつも両親の家に集まって正月を祝った。
義理の姉がいつも手作りの和菓子ふうおせちを持ってきてくれた。
両親もあの家も今はない。
つい最近、二人の娘が「あのお菓子はお正月の楽しみだった。美味しくてきれいで。どうやって作るのだろう」と。
あれから数十年も経ったのに、いまだに娘たちがあの味を覚えていたことに一念発起、義姉に電話で作り方を教えてもらった。
ヤマトイモを買って練習。
昔はヤマトイモといえば手の形をしていたが、今はどこにも見当たらず、ナガイモの形の物だけだったが味に変わりはないとのこと。
とにかく作り方は超シンプル。
吹きこぼしさえしなければ失敗はしない。
晦日の前日。
準備したのはヤマトイモ、千円分ぐらい。栗の甘露煮、これも千円ほど。それと砂糖のみ。
鍋が小さかったのですぐ吹きこぼれそうになる。傍でずっと見張っていて、火を消し湯をこぼす。それを4回。
箸でイモがほろほろ崩せるようになると、ひたすらイモを潰すだけ。
いつもは料理に砂糖はほとんど使わないが、お菓子には砂糖を入れないと餡がつややかにきれいにできない。
大匙3杯ほど入れ、ついでに塩をほんの少し。
完成!ヤマトイモの皮むきを始めてから2時間ほど。
正月用のカラーホイルカップに入れると雪をかぶった花畑みたいに。
テーブルに並べ終わったころ、次女一家がピンポーン。お寿司が届いたころ、長女一家が。
「わー、きれい」
「おいしそう」
「お母さん、作ったの?」
「あの頃を思い出す~」
「たったひとつでも、他人が、わー、これ、どうやって作ったの?と感心するようなレシピをもっているといいよねえ」
などひとしきり思い出話に花を咲かせる。
(義姉さん、丁寧に教えてくれてありがとう)
手作りの菓子で迎える晦日なり