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おっさんネコの悲しみ(2)

おっさんネコは野良です。

前は、ぼくちゃんネコで大事に大事に育てられていました。でも、交通事故で死んでしまったのです。

せっかく生まれ変わったのに、ぼく、人間にはなれなかった。

おっさんネコは悲しくなりました。

人間の王子さまに一度でいいから生まれ変わりたいなあ。

王子さまが無理なら、フツ―の人間でもいい……。

そこへ、お姫さまネコがやってきました。

「あっちへお行き。そこはわたしの場所だ」

「なんだ?いばって。ただのネコのくせに」

「わたしは人間の女の子だった。幸せに暮らして、幸せに年取って、死んだのだ」

「えーっ、人間だったのですか」

おっさんネコはうらやましくて泣きたくなりました。

「今度は人間のお姫さまに生まれる予定だったのだが、神さまが間違って、ネコにしてしまった」

お姫さまネコの目に涙がうかびました。

おっさんネコは思わずさけびました。

「泣かないで。きっと、今度は人間のお姫さまに生まれ変わるよ」

「でも、生まれ変わるためには、また、死ななきゃならない」

「そうか……」

おっさんとお姫さまは急にしょぼんとなりました。

「ぼく、せっかく生まれ変わったのだから、しばらくは今のままでいいや」

「そうかも知れぬ」

お姫さまネコは前よりちょっとやさしい声で言いました。

おっさんネコはお月さまを見あげました。

このままでもいいか。生まれ変わって生きているだけでも。

だって神さまの手違いで生まれ変わることさえ出来なかったネコもいるんだから。

月のきれいな夜でした。

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