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永遠の少年に捧ぐ 根岸尚徳
周藤さんの作品を初めて拝見した時、何と素朴に済んだ絵画世界か!と感嘆したことを覚えている。心に何のわだかまりもない“虚心”ということが、ごく自然に、当たり前のように絵に表われていること。これが周藤佐夫郎という作家の最も「偉い」ところだろうと思う。要するに本格的な絵なのだ。
周藤さんの「虚心」はいったい何処から来ているのか?私は品川みづゑ会の講師としてお世話になることになってから親しく様々なお話を伺った。その中で強く印象に残ったのは、ほころぶような笑顔で話される子ども時代の思い出だった。野球少年だったという周藤さんの話は、戦前戦後の不安で厳しい生活にも関わらす、屈託のない少年の心躍るような楽しいエピソードの数々だった。 96歳になった今でも、その時の少年が目の前にいるように思える。野球に明け暮れた少年の元気でピュアな心持ちが、歳を経てもそのまま絵に表われているのだ、と納得したことを覚えている。
周藤さんの絵の特徴を一言で言うと「直球」である。透明水彩という繊細な画材を扱いながらも、最初からいきなり強く濃く塗り込んで行く。そして速い!カーブをかけたり夕イミングをずらして胡麻化してやろうとか、そんな小賢しい駆け引きは無しだ。だから邪心のない澄んだ絵画空間が生まれる。観ていると気持ちがスーツと晴れるのだ。そして氏の作品に度々現れる赤!「周藤スカーレット」とも呼ぶべき、命の根源を象徴するような、特別な赤だ。どこまでも温厚で人を包み込むような親しみのある人柄の奥に、強い生命の火が静かに燃えているのを私たちは見る。
誤解を恐れずに言えば、氏の絵画に立ち向かう姿勢は、徹底した「アマチュアリズム」だということ。他者の評価をあてにしない。自分が描きたいように描く。頭で描くのではなく「腹で描いている」のだ。実はこれこそが芸術の本道であり、氏の作品を素朴にして本格的なものにしているあかしなのだ。
今回の画集で、私たちは初めて氏の画業の全体像を目にすることになる。私たちは改めて、少年の様に体当たりで夢中に描くことの大切さを学ぶことになるだろう。最後に、こんな未熟な講師にも関わらず、温かくお世話をして頂いていることに感謝申し上げるとともに、誰からも愛される周藤さんのご健康と益々の御健筆をお祈りして止みません。
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