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絵本ってこんなにおもしろい! 2    酒井倫子

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あの森へ    クレア・A・ニヴォラ 作・絵

木の葉のざわめきが聞こえるような魅惑的な森の絵

 ぼくは、レンガ色の屋根の立ち並ぶ美しいねずみ村の住人です。ぼくの部屋には暖炉があり、その前にはお気に入りのカーペットに、すわり心地の良い安楽椅子‥‥。清潔で住み心地満点のすみかの主です。
 ところが村はずれには、まつ黒に茂る森が広かっていて大変不気味です。よく森の夢を見ては怖くて震え上がってしまいます。

 ある夜、あんまり怖いので、ぼくは決心して森へ行ってみることにしました。もう一度大好きな部屋を振り向いてみます。それから思い切ってとび出し、いつもの村を抜けてどんどん森へ向かって進んでいきます。もう街並みはどんどん後ろになり、前には森へ続く細い一本の道があるのみ。

 黒い森が近くなるにつれて、ぼくの心臓はドキドキし、家に逃げて帰りたくなります。道に迷ったり、怪獣に食べられてしまうかも。けれどもう帰れません。森はいよいよ近くなり、大きな二本の木をくぐって森へ入っていきました。

 けたたましい鳥の鳴き声、恐ろしいものが迫ってくる気配。ぼくはそれから逃げようと焦って倒れてしまいました。どのくらいたったのでしょう。ふと目覚めると目の前に白い蝶が守護天使のように羽を動かしていたのです。
 それから落ち着いて見ると森は怖いどころかすばらしい自然を見せてくれるところだったのです。ぼくは暗くなるまで森のドラマに見とれていました。

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 この物語には、アメリカのマサチューセッツ州に住むクレア・A・ニヴォラさんが、文章と木の葉のざわめきが聞こえるような魅惑的な森の絵を描きました。そしてこの絵本に共感されたノンフィクション作家の柳田邦男さんが翻訳されました。柳田さんは、ご自身が自立したころの山登りの記憶と重なった、と書かれています。「子どもは、とてもできないと思っていたことや怖いと思っていたことに、勇気をふりしぼって挑戦し、ハードルを越えられたとき、自信と自立への大きな{歩を踏み出すものだ}と述べられています。

 子どもたちがあまりにも親の庇護下に置かれがちな現代、自立できずに家にひきこもったり、社会人としての責任を自覚できなかったり、働く意義さえ感じないという若者が多いと言われています。この本が、子育て中のお父さんお母さんに届き、少年や少女の自立を促す役割を果たすことを祈ります。

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 酒井さんに挑戦の矢を放ってからすで十数年。とうとう最初の本が刊行された。六十冊の絵本が、
第四章 親子でいっしょに楽しむ絵本
第五章 命の大切さを伝えたいときに読んでほしい絵本
第六章 子育て中のお母さんへ贈る本

 という構成で絶妙なるエッセイととも編まれている。絵本を愛する人、あるいは絵本を書いてみたい人の必読の書である。


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