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学校も、田畑も、森も、山も、福島県全域をきれいにしてください

第8課   お願い  福島県三春町 中二 橋本伽耶
 
震災と原発事故から5カ月が経ちました。
今、福島県を離れて暮らす人は何人いるでしょうか。そして、福島県に残って窓を閉めて生活している人はどれほどいるでしょうか。
全国に避難している福島の人たちが、どんな想いで故郷を離れてきたのか、皆さんに分かってもらえるでしょうか。福島の子供たちがプールに入れず、マスクをして登下校しているこの状況を安全と言い張る政府に、私はとても疑問を感じています。今まで法律で決まっていた数値を何十倍にも引き上げて、それが安全だと言われても、私には信じられません。そんなやり方は私たち中学生の間でも通用しないでしょう。福島県民よりもお金のほうが大切なのですか。
大人が勝手につくった原発で、なぜ、福島の子供たちが被爆しなくてはならないのか、なぜ、こんなにつらい目にあわなくてはいけないのか、これほどの事故が起きても、どうしてまだ原発再開を目指すのか、私にはまったくわかりません。このような状況で総理大臣が替っても、良い国がつくれるとは、思えません。
私は六月に転校して、とても悲しい思いをしました。友達も泣いて別れを惜しんでくれました。そして、私の前と後にも何人かの友達が転校していきました。こんな風にだんだん、みんながバラバラになっていくのは、私たちにとって耐えがたく悲しいことです。出て行った人も残っている人も、お互いのことが心配でたまりません。ですから、私たちが学校の友達とみんなで一緒に安全な場所に避難できるよう、真剣に考えて下さい。
そして、みんなが避難している間に、学校も田畑も森も山も川も、福島県全域を徹底的にきれいにする計画をたてて、それを実行してください。私の友達を、仲間たちを、絶対に誰ひとり傷つけないでください。私たちが将来、本当に安心して暮らせるように、今できる最大限の努力をしてください。よろしくお願いします。
 
 
対話編
A 橋本さんの作文、すごいよね。
B なんかさ、福島の子供たちを代表して、政府に対して、なめんじゃねえよ、ちゃんとやってくれよって叫んでるよね。
A 政府だけじゃなくて、日本という国に、なんか厳しく対決を迫るというか、ものすごく厳しい子供たちの叫びだよ。
B 橋本さんのこの作文、最後に《よろしくお願いします》と書いてるけど、これって、みんな簡単にThank youって訳しているけど、これっておかしいと思わなかった。
A あたしの持っている翻訳ソフトもThank youだった。
B いろんな翻訳ソフト使ってみたけど、みんなThank youなんだよね。それでお父さんに訊いたのよ。
A あんたのお父さん、大学教授だもんね、英語ペラペラなんでしょう。
B ぜんぜんだめよ、全然話せないの。でも英語の本とか新聞はすらすら読める人だからさ、それでお父さんにこのテキストみせたら、もし橋本さんのこの文章が、スピーチだったらThank youでいい。Thank you にもいろいろ意味があって《ご清聴ありがとうございました》とか《これで終わります》とか《以上の点、よろしくお願います》といういうさまざま意味があるって言われた。
B ああ、そうなんだ。よくスピーチしたあとに、Thank youっていうけどもあれは《私の意見は以上です》という意味なんだ。
A そうなんだって、それでさ、この橋本さんの作文の《よろしくお願います》は、そういう意味のThank you ではなく、請願の権利を強く表明したものだと言うのよ。
B なに、請願の権利って?
A 私たちの生活をよりよくするために、国民がいろんなことを政府に要求する権利。
B そうだよね、この《よろしくお願いしますか》ってただThank youとか、Please とかじゃないよね。
A だからここはもっと強い意味をこめて、七フレーズにしたのよ。
Please return immediately the right for us to live.
Please return the right to live.
Please return a town, a village, woods, and a school to us.
Please return the family and friend who became scattering to us.
Please be sure to realize our demand.
We demand these things strongly.
Please clean the field polluted by radioactivity and return to us.
B わあ、すげえ、かっこいい。こんな風に訳されて橋本さんもうれしいと思うよ。





 
 

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