ただ一撃にかける その三
ブロードウェーの華麗な行列 ウオルト・ホイットマン
3
それから君、世界の「自由」よ、
幾千年また幾千年と、君はその輪のなかほどにゆったりと坐りつづけることになる、
すると君を訪ねて、きょうはこちら側からアジアの貴公子がやってくる、
明日はあちら側からイギリスの女王が彼女の長子を派遣してくる。
標識が逆の方向を指し、地球がすでに囲いこまれ、
輪がめぐり終えられて、旅もとうとうおしまいとなる、
箱の蓋はわずかに開いているだけなのに、香気は箱のすみずみからたっぷりと匂い出ている。
若き「自由」よ、すべてのものの母であるこの尊ぶべきアジアに対し、
いつも変わらず配慮をつくせ、血気さかんな「自由」よ、何しろ君はすべてのものだ、
かずかずの群島を越えて君のところへ便りを寄こすこの疎遠な母に君の誇り高い頭を垂れよ、
誇り高い君の頭をせめて今は低く垂れよ、若き「自由」よ。
子供らはそんなに長く西の方へとさまよっていたのか、そんなに奥まで踏みこんでいたのか、
おぼろに霞む古い時問はそんなに長く「楽園」から西へ西へと流れ出たのか、
これまでのすべての世紀は、終始ひそかに休みなく、ゆえあって君のために西へ向かって歩いてきたのか。
彼らは正しく、それに思いも成就した、こんどはまわれ右をして、そこから君の方角へ旅立つときだ、
今こそ東の方へも、「自由」よ君のために、すなおに行進を始めるときだ。
(酒本雅之訳)