日本の宝を失いました
水俣病の実相を描いた小説「苦海浄土」で知られ、二月に九十歳で亡くなった作家、石牟礼道子さんを送る会(水俣フォーラム主催、朝日新聞社など共催)が15日、東京・有楽町朝日ホールで開かれた。約千人が石牟礼さんの遺影に黙禱(もくとう)を捧げ、交流の深かった人たちが悼む言葉を述べた。
会に先立ち、交流があった皇后さまも会場を弔問に訪れた。石牟礼さんの遺影を見つめ、白い花一輪を捧げて深く一礼した。長男の道生(みちお)さんに「お悲しみが癒えないでしょうね。慈しみのお心が深い方でした。日本の宝を失いました」と声をかけたという。
さらに皇后さまは、社会学者の鶴見和子さんの名をあげ、石牟礼さんと初めて会ったのが、2013年7月の鶴見さんを追悼する催しだったことに触れた。同年10月、天皇陛下とともに熊本県水俣市を訪れた際、胎児性患者2人にひそかに面会したのは、石牟礼さんから「胎児性患者に会ってやって下さいませ」との手紙を受け取ったことがきっかけだった。
道生さんは皇后さまに「患者さんに会ってくださり、母が感激していました」と伝えたという。(朝日新聞、上原佳久、編集委員・北野隆一)
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