絵本ってこんなにおもしろい! 酒井倫子
雨、あめ ピーター・スピアー
画家のピーター・スピアーはオランダのアムステルダム生まれ。海軍で兵役を終えたあとオランダの最有力雑誌の記者を数年間勤め、1952年アメリカ合衆国に渡り、その後、百を上回る絵本などの作品を生み出しています。それらはどれをとっても確かなデッサンカの上に、詩情とユーモアと計り知れないエネルギーを私たちに与えてくれます。
評論社ではそれらの作品の中でも代表作と言われる『きつねのとうさん ごちそうとった』(1962年コールデコツトーオナーブック)、『ノアのはこ船』(1978年コールデコツト賞)、『きっと みんな よろこぶよ!』、『ああ、たいくつだ!』、『せかいのひとびと』などを評論社の児童図書館・絵本の部屋として、日本の子ども向けに出版しています。
この度紹介する『雨、あめ』は彼の代表作のひとつで、字のない絵本として有名です。字がないということは、まさに絵が語る絵本ということで、読む人がお話を勝手に想像してひもとくことの出来る楽しい絵本なのです。読む人の数だけお話が生まれるのです。
ピーター・スピアーは、実に活発に動く心とそれをどんどん表現していく魔法の手を持つ少年のように、ナイーブな画家だと思います。お姉ちゃんと弟の姉弟が突然やって来た雨をどんなに楽しんだことか! それは皆さんそれぞれが感じとってください。
今、当館では「水のファンタジー絵本原画展」(~6月26日)が始まり、『雨、あめ』の原画のためのエスキス(下絵)を観ていただくことができます。幸いなことに、この貴重なエスキスを評論社で所蔵しておられ、お借りすることができました。私どものように小さな館では外国人画家のものはなかなか企画しにくいので、本当にありがたいことなのです。
この絵の額装は、額装用のマットで画用紙の余白部分を隠さずに、絵本製作時に画家が指定する内枠の線や、印刷をする時の注意書きなどがすっきり見えるように配慮されています(六本木額装店、ラピアーツが担当)。このような額装は実に珍しく、画家の息遣いや想いが私たちに伝わってきます。本誌『おさなご』225号で紹介した『貝の子プチキユー』の原画も見事です。皆さん、ぜひ一度絵本の原画に触れてみてください。そして絵本の楽しみ方を再発見してください。
安曇野絵本美術館の館長、酒井倫子さんに挑戦の矢を放ってからすでに十数年の月日が流れたが、とうとう最初の本が刊行された。六十冊の絵本が、
第一章 親子でいっしょに楽しむ絵本
第二章 命の大切さを伝えたいときに読んでほしい絵本
第三章 子育て中のお母さんへ贈る本
という構成で絶妙なるエッセイとともに編まれている。
絵本を愛する人、あるいは絵本作家を志す人の必読の書である。
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