ゆるぎない言葉の世界を確立し、時間に廃れない文体をつくりだしていくにはどうしたらいいのだろうか
彼女は今では女性作家の第一人者になっていて、連載をいくつもかかえ、直木賞の選考委員にもなっている。しかし、ぼくは予言するのだが、この人気女性作家の遺体が棺桶に収められた瞬間から、彼女が書いたおびただしい本はゴミとなって捨てられるだろう。一年もたてば、彼女の名前さえ人々はわすれていく。彼女だけではない。日本の流行作家の大半がそういう運命をめぐることになっている。そんな彼らの対極にいる女性作家が須賀敦子さんだ。彼女が没したのは1998年だから、すでに22年の月日が流れているのに、