『世界で最も危険な男』(原題“Too Much and Never Enough”)
品位と知性のある暴露本。そんなものが存在するとは、本書に出会うまで考えたこともなかった。2020年7月14日に発売されるや初日だけでほぼ100万部が売れたのは、「あのトランプ大統領の姪が書いた」「大統領とその側近が出版を阻止しようとしたが敗訴した」という話題性がもちろん大きかっただろう。しかし臨床心理学者であるメアリー・トランプは、叔父ドナルドの深刻な人格的欠陥をその家族史(親兄弟との関わり、特に父親の影響)に起因するものとして描いており、冷静で的確なその筆致はまったく予想