草野香

翻訳歴ン十年。長らく文芸出版以外の畑を歩いていたのだが、近年は選り好みを諦めつつある。いい年をして慣れぬペンネームが痛し痒し。

草野香

翻訳歴ン十年。長らく文芸出版以外の畑を歩いていたのだが、近年は選り好みを諦めつつある。いい年をして慣れぬペンネームが痛し痒し。

最近の記事

『世界で最も危険な男』(原題“Too Much and Never Enough”)

 品位と知性のある暴露本。そんなものが存在するとは、本書に出会うまで考えたこともなかった。2020年7月14日に発売されるや初日だけでほぼ100万部が売れたのは、「あのトランプ大統領の姪が書いた」「大統領とその側近が出版を阻止しようとしたが敗訴した」という話題性がもちろん大きかっただろう。しかし臨床心理学者であるメアリー・トランプは、叔父ドナルドの深刻な人格的欠陥をその家族史(親兄弟との関わり、特に父親の影響)に起因するものとして描いており、冷静で的確なその筆致はまったく予想

    • 『世界で最も危険な男』(原題“Too Much and Never Enough”)