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第2回 書店人の覚書帳

2025年(令和7年)
おめでとうございます。今年もよろしくお願い致します。

 年末に『書店経営指標2024年版』(日販ストアソリューション課)を眺めていました。

書店経営指標に思うこと

数値は、2024年8月編集時の実績で、まず売上高の前年比が全体平均で、95.6%
立地別に見ると「駅ビル」が98.1%「駅前」98.3%「SC内」96.4%「郊外」93.4%となっています。

客数前年比93.4%に対し、客単価前年比103.4%と10%のひらきがあり、客数の減少を定価アップで補えていません。

前年比100%を超えている書店の割合が、全体の20.9%であり、8割の書店が前年を割っている状況がわかります。
立地別で見ると「郊外」で前年を超えている店舗は、15.8%と最低です。コロナ禍の特需とも言えた郊外型書店への回帰は終焉を迎えたのでしょう。それを表すように「駅ビル」の書店で前年を超えているのは、全体平均を大きく上回る35.5%でした。リモートワークを終えて、出勤者が増えているのですね。

売上総利益率がアップしている書店は全体の53.2%で、半分以上の書店が利益改善できています。利益率が高い書籍外の商材の取り扱いが功を奏しているのが、次の頁の「店舗ベースの簡易PL」を見るとわかります。

『書店経営指標2024年版』(日販ストアソリューション課)より

上記の表の通り、Book売上構成比が50%未満の売上総利益が32.0%であり、全体平均28.4%よりも3.6%高いのです。
これらの数値を見た限りでは、書店の複合化、新商材の導入は増加すると考えられ、本の売場はますます減少傾向となるでしょう。

果たして、この判断が良いか?

次は、販管費の中でも大きな経費である人件費比率を見ると、全体平均は、11.6%
立地別で見ると「駅前」が13.3%と高く、「駅ビル」11.0%「SC内」11.3%「郊外」11.4%となっています。
また坪数別で見た時、「100坪以下」が13.8%と最大です。
さらに月商別で見ると「1000万円以下」が、13.9%と最大となっているのです。
そして、営業利益率を見ると「駅前」-1.4%「100坪以下」-1.1%「1000万円以下」-2.1%と、それぞれが赤字となっています。
つまり、駅前、100坪以下、月商1000万円以下の書店は、赤字で商売としては、成立しないということです。

次に大きな経費の地代家賃率を見ると、全体平均は、7.6%
「駅ビル」11.0%と最大値。坪数別では「201坪〜300坪」が8.2%
月商別では、「1501万円〜2000万円」8.2%となっています。
これは、駅ビルという好立地であっても、「201坪〜300坪」の書店は、月商2000万円以上ないと家賃率は増大し、人件費を抑えないと赤字になることを意味しています。

 地代家賃は、売歩(売上歩合)での契約が多いが、最保(最低保証)の家賃の契約もあり、一定の売上を確保すれば、売歩どおりの◯%の家賃となるが、売上が落ち込むと最低保証の家賃を支払わなければなりません。その場合、売上に占める家賃比率は、跳ね上がるのです。

私論ですが、近年の書店は、坪数のわりに売上がとれていないのが実情であり、最低保証の家賃しか払えていないという例も少なくない。本だけでは利益がでないと言えます。

10頁には、2020年版〜2024年版の営業利益率が表で示されていますが、衝撃的です。
2020年版では、2.7%あった営業利益率が、2024年版では、0.6%と激減しています。
閉店が止まらないわけですね。

『書店経営指標2024年版』(日販ストアソリューション課)では、その他、買上げ客単価と客数や、一人当たりの売上高、人時生産性、労働分配率、商材別(Book、文具、雑貨)の売上高前年比、ジャンル別の商品回転率、1坪あたりの売上高など書店経営の分析に必要なデータが揃ってます。

ご購入をご検討ください。

それでは、この続きは
2月26日の「第25回 本の学校連続講座」でも語らせていただきます。
是非、お越しください。

つづく

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