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手抜き介護 60 目薬を差すとき

父も母も白内障やドライアイなど、目薬が欠かせない。父は自分で差すのだけど、母はうまく出来ないらしく、いつも父にしてもらっている。朝食の後ソファに仰向けになり、頭側に座った父が目薬を差す。

マストになっているのは2種類。間隔を5分おくように言われているので、数字にこだわりの強い父はいつも時計を見る。5分が3分になったって、どうってことはないんだろうけど、医師の指示は守らなきゃと思うらしい。

母は、そんな状態で待っているのがじれったい。「もう5分経った(からさっさと差せ)!」「まだ経ってない(から黙って待て)!」という不毛のやり取りが繰り返される。食後に横になっているので、そのまま寝てしまうこともたびたび。いびきをかく母と、目薬を片手に寝込む父。面白いから放っておくが、いつも10分くらいでちゃんと2人とも我に返る。

夕方は、父が電気代を気にしてなかなか照明をつけないため、薄暗い中での点眼になったりする。目が悪い人が目が悪い人に、闇の中でうまく差せるわけがない。「ちゃんと入ってない! みんなこぼれた! へたくそ!」と母。「そんなら自分でやれ!」と昔の父なら怒っていたかもしれない。でもそんな風に傷口を広げることは、ずいぶん減った。

私がいるときは、私が早々に明かりを点けるけど、2人きりの生活に戻ったらまた活発な(!)やり取りに戻るんだろう。こうやって55年も過ごしてきたなんて、全く表彰モノだと思う。

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