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現代語メール句会 2021年4月 結果


現代語メール句会と題して、
メールによる句会を開催しています。

今回は6名のみなさんに全30句をお寄せいただきました。

以下その結果発表です。



現代語メール句会
2021年 4月


ご参加のみなさんの選と講評です

吉田翠さん選 》

◎ 特選句 ◎

のぼる土手もう夏芝の踏みごたえ
草笛

次の季節の到来を肌感覚で詠みあげ、みずみずさも感じられました。素朴でありながら俳句らしい表現で余情が広がる句だと思いました。

◯ 入選句 ◯

向かい風遡上してこそ鯉のぼり
悠凜

母の日にふと思い出す祖母の顔
悠凜

褪せてこそ日記帳にも春の虹
笹塚心琴

この闇を照らしてみせよ花かがり
悠凜



悠凜さん選 》

◎ 特選句 ◎

最後まで花と言われて散る花よ
吉田翠

誇り高く咲き、散り際にまで気高さを感じさせる花の姿が情景として浮かびました。

花、としていますが、人もこのように生きる人が実際にいらっしゃるわけで、思わず唸ります。

◯ 入選句 ◯

傘ひとつ心ふたつよ春時雨
笹塚心琴

今いちどやり直せるか春の月
吉田翠

甘くない夜にファジーネーブルを
吉田翠

のぼる土手もう夏芝の踏みごたえ
草笛



笹塚心琴さん選 》

◎ 特選句 ◎

最後まで花と言われて散る花よ
吉田翠

花は朽ちても花。凛とした尊厳ある生命の力強さと、やがては必ず散るというさだめを見事に詠んだ句だと感じました。そういえば葉桜には人々は(自分も含めて)カメラのレンズを向けないよな、ということもふと思いました。

◯ 入選句 ◯

今いちどやり直せるか春の月
吉田翠

たけのこのなかの宇宙の静かさよ
草笛

ふと見れば悠々と立つ葉桜よ
吉田翠

のぼる土手もう夏芝の踏みごたえ
草笛



矢口れんとさん選 》

◎ 特選句 ◎

たけのこのなかの宇宙の静かさよ
草笛

筍の中の宇宙とは何だろうか?と興味を惹かれます。我々が食べている身の部分か、空洞の部分か、はたまたその両方か……などと考えているうちに、ふと下五が現れてどこか納得させられてしまう。外から見ても内を覗いても静か。

◯ 入選句 ◯

ほしぞらも旅館のうちよ河鹿鳴く
草笛

待ったひと待たせたひとに噴水か
草笛

甘くない夜にファジーネーブルを
吉田翠

のぼる土手もう夏芝の踏みごたえ
草笛



ムーンサイクルさん選 》

◎ 特選句 ◎

最後まで花と言われて散る花よ
吉田翠

まるで女性の一生を見せつけられるかのようなキレのある一句。

読み方によって哀しさと、誇らしさが同居しているような不思議な感覚を覚えます。

◯ 入選句 ◯

ゆく人の目を和ませて花の宿
悠凜

のぼる土手もう夏芝の踏みごたえ
草笛

渓流の菩薩となりて上り鱒
矢口れんと

たけのこのなかの宇宙の静かさよ
草笛



Kusabue選 》

◎ 特選句 ◎

向かい風遡上してこそ鯉のぼり
悠凜

明日はこどもの日。鯉のぼりの風習は、登竜門・鯉の滝登りが元になっているそうです。向かい風が強いほどみごとに泳ぐ鯉のぼり。竜になるために急流を遡上しているのだという句で、子どものたくましい成長を願う昔ながらの思いがこめられているとも感じました。

◯ 入選句 ◯

追悼号めくり納めて鐘供養
矢口れんと

傘ひとつ心ふたつよ春時雨
笹塚心琴

最後まで花と言われて散る花よ
吉田翠

夕暮れて 猫の子つづく 帰り道
ムーンサイクル



【得点票】


◯ 4点句 ◯

最後まで花と言われて散る花よ
吉田翠

のぼる土手もう夏芝の踏みごたえ
草笛

◯ 3点句 ◯

たけのこのなかの宇宙の静かさよ
草笛

◯ 2点句 ◯

向かい風遡上してこそ鯉のぼり
悠凜

傘ひとつ心ふたつよ春時雨
笹塚心琴

甘くない夜にファジーネーブルを
吉田翠

今いちどやり直せるか春の月
吉田翠

◯ 1点句 ◯

母の日にふと思い出す祖母の顔
悠凜

褪せてこそ日記帳にも春の虹
笹塚心琴

この闇を照らしてみせよ花かがり
悠凜

ふと見れば悠々と立つ葉桜よ
吉田翠

ゆく人の目を和ませて花の宿
悠凜

渓流の菩薩となりて上り鱒
矢口れんと

追悼号めくり納めて鐘供養
矢口れんと

夕暮れて 猫の子つづく 帰り道
ムーンサイクル

ほしぞらも旅館のうちよ河鹿鳴く
草笛

待ったひと待たせたひとに噴水か
草笛

敬称略
失礼いたします



【ご投句いただいたみなさんの全作品です】

◯ 矢口れんとさんの作品 ○

渓流の菩薩となりて上り鱒

此処にまた国家ひとつぞ藤の棚

辺境を行くアネモネの生き様よ

追悼号めくり納めて鐘供養

ニ瓶のジャムで黄金週間を


◯ 吉田翠さんの作品 ○

最後まで花と言われて散る花よ

蜃気楼音すらも消す老木よ

今いちどやり直せるか春の月

甘くない夜にファジーネーブルを

ふと見れば悠々と立つ葉桜よ


○ 笹塚心琴さんの作品 ○

傘ひとつ心ふたつよ春時雨

かわいいを辞書から奪う猫の子よ

蜃気楼手を振り返す遠い友

褪せてこそ日記帳にも春の虹

レモン水舌出してこそ恋の味


○ ムーンサイクルさんの作品 ○

八重桜 ほろり手に受け 春ゆきし

夕暮れて 猫の子つづく 帰り道

爪研いで ついてくトカゲ 目がキラリ

なめくじと 窓の掃除を くらべっこ

葱ぼうず はらりと吾子へ 揺れる風


◯ 悠凜さんの作品 ◯

ゆく人の目を和ませて花の宿

いつからか祝日となりみどりの日

向かい風遡上してこそ鯉のぼり

母の日にふと思い出す祖母の顔

この闇を照らしてみせよ花かがり


◯ Kusabueの作品 ◯

たけのこのなかの宇宙の静かさよ

すこし差す黒しおのいろ初がつお

待ったひと待たせたひとに噴水か

のぼる土手もう夏芝の踏みごたえ

ほしぞらも旅館のうちよ河鹿鳴く


みなさま、ご投句・ご参加
ありがとうごさいます






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