現代語俳句集 4
「 虹待つ人 」
こころごと押しひらくまど風薫る
ばんざいの子のへそあらわ衣更え
かもめたち飛んでばかりよ夏怒涛
すずしげにあぐらをかいて丘の上
大ゆうやけかばんを置いて旅終る
うなずいて箸をとる人どじょう鍋
いっせいに穂がさわぎだす麦の笛
昼寝からめざめてみても一人の家
たましひの痩せゆく心地夏の風邪
お見合いの席に扇子のわすれもの
☆
梅雨に入る着物の帯をかたくしめ
傘さしてたたずむ人もかきつばた
ちいさくて大きな茶室梅雨のなか
かみなりのあとの心のしずかさよ
あおぎみて虹待つ人か雨後の日矢
梅雨晴れてこころの底の水たまり
踏んでゆくわたしは巨人こけの花
よくひびく箸つかふおと梅雨の夜
日本をまるあらい梅雨まっただ中
解き放つたましいいくつほたる籠