四季折々の俳句 26
「 生きかへる 」
降る雪へ耳を澄ましてゐたりけり
咳よりもさびしきものは一人の夜
湯浴みしてとかすこころの氷かな
月曜日ともしてさむきあかりかな
鼻のさきまであたたまる生姜湯よ
おもきおとたてて冬蜂とびゆけり
灯ともしてはたらくひとら窓に雪
踏みしめてはたらきにゆく街の雪
ひとびとのけものめくなり白き息
酒にむせけむりにむせて焼き鳥屋
本音言うていまよりなかま燗の酒
☆
バス停にちひさき冬として立ちぬ
冬として家郷にかへりきたりけり
大寒をうたがふべきもなき夜かな
人の世に首をかしげてふくろふよ
なにごともなければ良いが雪の山
出くわしてあとずさりする狸かな
ひかる目のひいふうみいよ狸かな
逃げ足のなかなか遅きたぬきかな
釣りあげし鮃そつぽを向いてをり
飲むたびに生きかへるなり寒の水
ゆく雲にうなづきながら春を待つ