年間作品より 2021 悠凜さん選
今年noteに発表した俳句作品の中から
「今月の1句」
「今週の1句」
を、毎月選んでいただいていました
その作品をまとめました
2021年
12月
◎今月の特句◎
こころごと部屋暖房に切りかえて
寒いとつい肩や身体に力が入りがちですが、ずっとそんな風にしていると疲れてしまい、気も滅入ってしまいそうです。
心の中から、心の中だけでもあったまるスイッチをオンに出来たら、気分が少しは変わりそうに思いました。
『心と身体はつながっている』物理的にも精神的にも、互いに影響すると思っているので。
◯今週の一句◯
こころごと部屋暖房に切りかえて
けさの雪ひとひらずつが幸になれ
フェリー行く島ひとつずつ雪景色
じんせいのみな名優よ雪舞いだす
11月
◎今月の特句◎
寒灯よはたらくひとのつくえの上
陽が落ちるのが早くなるとなおさらです。
例えば暗い事務所で、例えば暗い書斎で、ふっと灯った明かりの空間は、そこに自分しかいない、まるで異空間のように感じる時もある気がします。
同時に、薄暗い光であっても暖かく感じるなぁ、と思いました。
◯今週の一句◯
身にしみて時計がきざむ時のおと
風が火を吹きちぎっては磯焚き火
寒灯よはたらくひとのつくえの上
かがやいてどれもしんじつ冬の星
10月
◎今月の一句◎
明けぞらよ鈴虫がふるすずのおと
昔、使わなくなった工場(こうば)で祖父が鈴虫を飼っていたのを思い出します。茄子や胡瓜を切って楊枝に刺し、虫籠に入れたことも。
鈴虫の音色を聞くのは主に夜更けでしたが、仄かな灯りを点けると、羽を震わせる音がシンとした工場の中に響いたものでした。
○今週の一句○
見つめては非げんじつへ曼珠沙華
きつつきよ静かさという山のおと
平和にも歴史があってほしづき夜
明けぞらよ鈴虫がふるすずのおと
9月
◎今月の一句◎
おむすびよおおぞらだいち今年米
先月、従兄から例年並みの出来だったと連絡がありました。従兄はここ近年で農業を伯父から教わり始めたので、まだまだ大変なことも多いと思います。
専業農家ではなくても、手間をかけて、愛情かけて作ることに違いはなく、良かったなぁ、と思いました。
○今週の一句○
踏み切りのすみにかならず草の花
あおい地球ただすえながく星月夜
酒ひとりひとりながらの良夜こそ
おむすびよおおぞらだいち今年米
草のさきしならせてこそつゆの玉
8月
◎今月の一句◎
開けっぱなし灯しっぱなし盆の家
お盆の母の実家、と言えばまさにこのイメージです。
玄関どころか、縁側もぜんぶ開けっ放し、網戸もなし(笑)
それでも大丈夫だった頃は確かにあって、いつの間にか墓参りの時には鍵をかけるようになり、時の流れを感じました。
○今週の一句○
引くたびに夏とおのいて波のおと
つどう日がやがてかならず大西瓜
千々の灯がとおくひとつに流灯よ
雲ながれ稲のいちにちいちにちよ
7月
◎今月の一句◎
そのおくへまたそのおくへ夏暖簾
こちらを7月の特句に。
暖簾って、特に何事もなければ気軽にくぐれるのに、時たまくぐりにくいことがあったりします。
それはお店の格や雰囲気ももちろんあるのでしょうが、実は暖簾には『結界』の意味もあるということで、今思うと当然のことだったのかな、とも思いました。
邪な心を持ってくぐってはいけないものなんですよね、本来は。
○今週の一句○
むぎわら帽子色あせてゆく毎日よ
目にあかくこころにしろく蓮の花
さんどうはまっくらなみち炎天下
そのおくへまたそのおくへ夏暖簾
6月
◎今月の一句◎
うちゅうにもある物語ふうりんよ
今回、6月の特句は別に選ばせて戴きました。
人が知らないだけで、宇宙のそこかしこに物語が広がっているかも、と考えると、そこは神話部としても胸が踊ります(笑)
○今週の一句○
もくもくと雲もくもくと田草取り
老人はなにを聞いてもふうりんよ
その果てに空あることよ尺取り虫
あおぎ見てつながっている夏の星
家いえのはしらになる木なつの空
5月
◎今月の一句◎
こどくとはみずから選ぶものか虹
サークル句会の時に選ばせて戴いた句ですが、やはりこれが頭に残ります。
色のスペクトラムを見れば孤独な印象はないように思える虹を、敢えてそう表現しているところにアピールしない孤高を感じました。
その時はこんな感想でしたか。
虹が孤高を選んでいるのか、孤高にならざるを得ないのか──きっと、わかる瞬間はなく見上げるのだろうな、と思いました。
○今週の一句○
生きる意味ただあかあかと夕焼空
のぼる土手もう夏芝の踏みごたえ
このほしをあおくしてこそ夏木立
きっぱりとしろでひとえで夏菊で
4月
◎今月の一句◎
和歌はこころ俳句もこころ鯉幟り
心の丈を謳っていても、通じることもあれば通じないこともあります。
そのことを、いい方にも悪い方にもこだわることなく、風になびく鯉のぼりのようであれたらいいな、と個人的に思ったりしました。
○今週の一句○
とうとさよ夜ごといのちを鳴く蛙
ちきゅうとはよみがえる星春の草
春雷よひとりひとりがひとりの夜
そのおくに待つ人がいる夕焼けか
3月
◎今月の一句◎
千年桜これがこどくということか
人から見ると、孤独にも威風堂々にも見える大桜ですが、桜自身は、ただそこに在る、のかも知れません。
人の身では千年そこに在ることなど不可能ですが、代わりに受け継がれていくものもあるのだろうと思いました。
○今週の一句○
この町よ春そのままにコーヒー店
今よただ舞いふぶくのがたきぎ能
はるの風邪死よりもとおい星々よ
千年桜これがこどくということか
昼は菩薩いまは閻魔の夜ざくらか
2月
◎今月の一句◎
万国旗おおぞらじゅうが春めくか
投句会で書きましたが、春の訪れに対する物理的なウキウキ感と、情勢的に穏やかに春めいて欲しい、という願いとを同時に感じました。
○今週の一句○
いまの世があつまるポスト立春か
その下で死んで生まれておぼろ月
あたらしいさいげつをまた耕すか
ひばり野に一見なにもないそらよ
1月
◎今月の一句◎
にんげんもすなおに咲けよ冬の菊
全く持って、ホントにそうだよなぁ、と思いました。『素直』って、何でもかんでも自分の我を吐き出すことでは決してなくて、簡単そうに見えて難しく、やってみたら案外簡単だった、という不思議なものかも知れない、と。
○今週の一句○
白息を吐きつぎの代へつぎの世へ
ふるさとをおもう人から雪になれ
いちぞくがまるくおさまれ春炬燵
学問もあすへあすへと木の芽どき
悠凛さん
選句ありがとうございました
今年も1年間
多作多捨で
句を詠んで投稿をしてきました
駄句の多さ、佳句の少なさは
あいかわらずでした
詠みつづけることでしか
わからないこと、気づけないことも
たしかにあって
それがまだまだ多いと
今回改めて気づかせていただきました
いつも
ご覧いただき
ありがとうございます
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