見出し画像

四季折々の俳句 13



「 押しの一手 」

引きだしに貝がらしまふ今朝の秋

日がさしてにはかに白し稲の花

鬼灯をあかるく摘んでゐたりけり

見はるかすあかねびかりの秋の海

ひとつづつひらくおもひで遠花火

それぞれの心にひらく花火かな

愛といふひと言の身にしみにけり

焼きりんご鼻先立ててくる子らよ

一輪を手にあゆむなりコスモス畑

秋風とつぶやきながら吹かれけり

呼ぶ声がきこえてこぬか大花野

大仕事まかされて立つ案山子かな

声あげてはげましあへり渡り鳥

天上のことはわからずいなびかり

うねりゆく雲から雲へいなびかり

柿食うてわが身のうちは大宇宙

頬杖をつくひとに秋深みけり

半生が揺れてをりけりすすき原

秋の虹ほどに人生うつくしき

背伸びして短冊つるす七夕竹

にはとりがひと声あげて秋高し

かまきりのつんと立つなり風の中

えいえんをかんじてゐたり大花野

新米を押しの一手で研ぎにけり

ぜいたくに炊けて一人のきのこ飯

焼くけむり贅沢にあげ秋刀魚かな

それぞれの人生を干す今年酒

いまだ見ぬ誰かをおもふ月見かな

月さして海は太古のあかるさよ

しんじつの願ひは叶ふ流れ星