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四季折々の俳句 23~ 年末




「 こよみ果つ 」

焚火へとあつまつて来よ夜明け前

雲間より日矢いくすぢも枯野かな

縄跳びをする子も絶えて路地の風

竹馬のあやうきいつぽいつぽかな

はくせいとわかつてゐても羆かな

指先でひかりむすべばオリオン座

むささびのはたはたはたと滑空す

かなしみを飲んで忘るる寝酒かな

どんと銃撃てば舞ひちる真鴨かな

ひとり立つバス停は冬どまんなか

大ぞらのひかりあつめて鶴飛べり

風邪引いてどこか安心してゐたり

降りつんでふるさとといふ雪の檻

灯をけして冬の銀河のただなかに

過ぎた日はすべてまぼろし葛湯かな

咳してもなにも起こらぬ地球かな

ひとり食ふいちまいにまい千枚漬

幸せにぽつんとつかる柚子湯かな

風邪癒えてはつとこの世の美しき

国ぢゆうに歓喜のうたがひびく暮

切りわけし聖菓のかずの笑顔かな

待つ人の心にサンタクロースが来

につぽんが押しよせてきし年の市

さつそくに火をおこしけり新巻鮭

二番目に箸をつけたき河豚刺しぞ

牡蠣といふ大海原をすすりけり

門松を立ててこころのさだまりぬ

年の瀬はあわただしくて平和かな

角もちをまるく大きく焼きにけり

さいげつがふぶきて暦果てにけり