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四季折々の俳句 9



「 マンタ 」

傘さしてひとりなりけり梅雨の中

雷鳴の梅雨もなかばとなりにけり

紫陽花の水とはぢけんばかりなり

世の中に一つ灯ともす梅雨ながき

何ごともなかつたやうに五月晴れ

幸はせに身をよぢりつつ氷菓食ふ

太平洋はばたいてゆくマンタかな

海中も夏かスキューバダイビング

早乙女のわらひあふなりかほの泥

早乙女も今はむかしとなりにけり

旅さきに傘をわすれし梅雨晴れよ

なみおとのとどろくことよ業平忌

ゆらゆらとたましひ泳ぐ金魚かな

かほ上げて雲のうへへと登山かな

すずしさのかたまりの岩仰ぎけり

いつてきの水飲みほして暑さかな

水のなか水わき出づるいづみかな

まつしろにけぶれるなかや神の滝

手にもてば白百合らしく香りけり

からだぢゆう光りまみれよ夏の川

あかん坊のかくしごとなき裸かな

ふうりんにとほき目をして一詩人

書きながら痩せるおもひよ夏の詩

風鈴売さびしきひとをあつめけり

足おとのゆきかふ部屋に昼寝かな

酔どれてだうしやうもなき裸かな

青ぞらよ海よかもめよハンモック

そらよりもきららかなりしかき氷

岬よりこころはばたくみなみかぜ

提灯のあまた揺るるやまつりうた