四季折々の俳句 9
「 マンタ 」
傘さしてひとりなりけり梅雨の中
雷鳴の梅雨もなかばとなりにけり
紫陽花の水とはぢけんばかりなり
世の中に一つ灯ともす梅雨ながき
何ごともなかつたやうに五月晴れ
幸はせに身をよぢりつつ氷菓食ふ
太平洋はばたいてゆくマンタかな
海中も夏かスキューバダイビング
早乙女のわらひあふなりかほの泥
早乙女も今はむかしとなりにけり
*
旅さきに傘をわすれし梅雨晴れよ
なみおとのとどろくことよ業平忌
ゆらゆらとたましひ泳ぐ金魚かな
かほ上げて雲のうへへと登山かな
すずしさのかたまりの岩仰ぎけり
いつてきの水飲みほして暑さかな
水のなか水わき出づるいづみかな
まつしろにけぶれるなかや神の滝
手にもてば白百合らしく香りけり
からだぢゆう光りまみれよ夏の川
*
あかん坊のかくしごとなき裸かな
ふうりんにとほき目をして一詩人
書きながら痩せるおもひよ夏の詩
風鈴売さびしきひとをあつめけり
足おとのゆきかふ部屋に昼寝かな
酔どれてだうしやうもなき裸かな
青ぞらよ海よかもめよハンモック
そらよりもきららかなりしかき氷
岬よりこころはばたくみなみかぜ
提灯のあまた揺るるやまつりうた