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四季折々の俳句 12




「 跳ねあがる 」

噴水といふよろこびの揚がりけり

そら豆のいつはりのなき青さかな

手にとりてちからわきけり夏野菜

につぽんにどつしりと夏座りけり

うるさくて平和なりけり蝉しぐれ

八月六日あめと日記にしるしけり

ひぐらしのすみわたるこゑ大宇宙

たまねぎをこがねでとぢて玉子丼

手花火のながなが咲いて哀れなり

目つむりておのれ見つめる夜の秋

けさからは秋ふうりんの響きかな

野をはしる風見てゐたり秋立つ日

ひぐらしの鳴きだしてより光の木

さびしさを丸かじりする林檎かな

ひだり手に持ちかへてより秋団扇

につぽんの空いろどれる花火かな

朝顔のこころが咲いてゐたりけり

揚がるたび秋高くなるとんびかな

吠えながらゆく化けものは大台風

赤とんぼ追ひかけてゐる平和かな

跳ねあがるよさこい踊り手に鳴子

ばあさまがもつともわらふ盆の家

ぶつだんのまへでは子ども終戦日

えいえんの終戦の日とすればよし

ながながと手をあはせるや墓参り

ひぐらしのこゑより遠き昭和かな

さいげつがながれてゆけり秋の雲

秋の夜のこころを映すかがみかな

につぽんを出ていつたひと天の川

えいえんに似たる一人の夜長かな