四季折々の俳句 17
「 ゆっくりと 」
見さだめてのぼりゆくなり秋の嶺
日のひかりすくふ手のひら水の秋
わがこころながれてゆけり秋の雲
今年米透きとほるまで研ぎにけり
音あげてすだちしぼるや焼秋刀魚
日のひかり月のひかりへ吊るす柿
こころざす人のかずだけ夜学の灯
☆
きんいろのふる里おもふ稲穂かな
えださきにゆくへさがして芋虫よ
いつせいにひらきて今日は菊花展
菊活けてしんとながめる暮しかな
秋遍路あすへむかつてあるくのみ
ゆびさせばみな立ちどまる秋の虹
秋の灯をともして後はゆつくりと
一人食ふ柚餅子は香りたかきかな
☆
秋の虹じんせいは詩にほかならず
死をおもひ生に行きつく秋思かな
栗の飯生きると決めて食ひにけり
サーカスのピエロが煙草吸ふ暮秋
言うてよりますます寒き夜明かな
庭ぢゆうを掃き清めたる焚火かな
風つれてやつてくるなり焼き芋屋
一人寝て夜明けとなりし炬燵かな
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