私の辞書遍歴<英チェコ・チェコ英辞典>
「2年生になるまで辞書は買わなくて大丈夫です」と言われて、私の大学でのチェコ語学習は始まった。
確かにそのとおりで、チェコ語においては、たいていの単語が文中で形を変えて登場する。
辞書を引く前に、いまそこにある単語の辞書形がどんな形かを知っていないと、ページをめくってもまるで意味がないのだ。
しかし、1995年ごろの日本では、チェコ語の辞書そのものが貴重だった。
大学一年の夏休み、一つ上の先輩がチェコに行くから辞書を買ってきてくれるというので、そのお言葉に甘えた。
チェコで売られていた辞書っぽいもの
そして、18歳の夏の終わり、手に入れたのがこちらの辞書。
Anglicko-český česko-anglický slovník(SPN、1994)である。
この白い辞書は、前半が英チェコ、後半がチェコ英となっており、あわせて1016ページある。
妙な縦長の判型で、厚さはあるが、毎日持ち運びするのもそこまで苦ではないサイズ。
おそらく、「英語で書かれた辞書を買うならこれ」という推薦された辞書があったかなと思うのだが、そちらはこれより大きかったような気がする。
これはそこまで大きくないが、編者を確認すると、その大きめ推薦辞書の編者と同じ教授の名前がある。
私に買ってきてくれた先輩の専攻はロシア語だったが、チェコ語の先輩と一緒に旅行したとのことだったので、その先輩の助言もあったのかもしれない。
ということで、大学の3年くらいまでこの辞書をせっせと使った。
不要な発音記号
辞書の前半、英語チェコ語のパートはこんな感じだ。
あらためて見るとフォントとサイズと太字の使い分けが読みやすい。
この白い辞書と一緒に、ポケットサイズの英和辞典を常に携帯していた。こちらのポケット英和はいまも使うことがあるくらい長年にわたって活躍している。
(スマホの登場でどうも絶版になったようだが…)
英チェコの部分だと、見出し語のあとに発音記号がある。
この発音記号、私にはいちいち不要で目についたが、もっぱらチェコ語を引くのが99%だった。
必要なのに書いてない名詞の性と変化パターン
そしてこちらがチェコ語英語のパートである。こちらをおもに引いていた。
通常のチェコ語辞書では必須であるはずの、名詞の性別や動詞の変化についての情報がない。例文もほとんどない。
そうなのだ、この英チェコ・チェコ英辞書はチェコ人が英語を学ぶために編纂されたもの。
だからチェコ人が当たり前のように使いこなしているチェコ語については情報がない。
この辞書でどうやって勉強してたのか、この辞書が原因でまちがえたりできなかったりしたことがなかったか考えてみるが、クラスメイトも100%辞書を持ってるわけではなかったし、授業で出てくる大事な文法項目や単語リストは先生方がちゃんとプリントなどで提供してくれていたのだと思う。まったく問題なかった。
この辞書の功績
このあと、たしか、大学3年の後半くらいに『現代チェコ語日本語辞典』を購入し、そちらを使うことが増えたんじゃないかと思う。
そしてまもなく、妙にでかいチェコチェコ辞典を手に入れ、それをおもに引くようになった。
この英チェコ・チェコ英辞書はチェコ語の辞書ではなく、英語学習の辞書なんだと理解して使うようになってから、それなりに役立った気がする。
チェコ和辞典には掲載されていない単語も、この辞書だと載ってる、ということも何度もあった。
それに、チェコ語の単語を調べるために英語を経由せざるをえなかった経験は、不便といえばそうなのだが、繰り返さざるを得ず、それによりその後の私のキャパシティが大きく広がったような気がする。
外国語について「わからないからやらない」という対応が自分にはない。
チェコ語がわからなくても英語がわからなくても調べていればいずれたどり着ける、という感覚があるのは、この辞書が貢献しているのかもしれない。
ここまで読んでいただき、とってもうれしいです。サポートという形でご支援いただいたら、それもとってもうれしいです。いっしょにチェコ語を勉強できたらそれがいちばんうれしいです。