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naotanu
【連載】ターちゃんとアーちゃんの歳時記 卯月
入学式
ターちゃんの顔が強ばっています。いつもはじっとしているのが大の苦手のターちゃんも、今日は大人しくしています。
それもそのはず。今日は、小学校の入学式。
真新しいジャケットが動き難そうです。初めてのネクタイが息苦しいのか、盛んに首の回りを気にしています。
パパとママと三人で学校まで歩いていくと、途中で幼稚園の友達に出会いました。みんな着慣れない服に、勝手が違うようです。
やっとターちゃんの顔に、少しだけ笑みが戻りました。
掲示板で、自分のクラスを確認して、教室の中で式の始まりを待ちます。クラスには幼稚園からの友達もいて、だいぶ緊張も解けたようです。
やれやれ。
しばらくして、五、六年生のお兄さんお姉さんの先導で、拍手に迎えられ体育館に入場します。
やっと入学式が始まりました。先生の紹介がありました。ターちゃんの担任は優しそうな女の先生でした。
式が終わると再び教室に戻って、先生から子供達への話が始まりました。ターちゃんはと見ると、先生の話は上の空、今まで張り詰めていた糸が切れたようです。
あの分じゃ、聞いてないな。
パパとママは、明日からの生活についての説明を、ターちゃんの代わりに聞き漏らすまいと真剣です。配られた教科書や学習用具を持参した袋に詰め込んで、やっと下校となりました。
「後でタクちゃんと遊んでもいい」
「ああ、いいよ」
「きれいだな」
「本当に」
校門の横に咲く桜。
今まで気づく余裕さえなかったことに、二人は苦笑しました。
帰宅するや否や異口同音に、
「自分がやる方がよっぽど楽だーっ!」
どかっとソファーに座り込むパパとママでした。
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