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存在しない定食屋、くるも食堂。

「いらっしゃいませ」

「何名様ですか?」

「お好きなお席へどうぞ」

「あっ、お客様申し訳ございません、店内は持ち込み禁止で…」

「恐れ入りますが、そろそろラストオーダーでして…」

「すみません、Paypayは使えないんですよ…え、現金がない???」


どんなお客様が来るのか、何を選んで食べるのか、オーダー通ってるのか、空いてる席はあるのか、お会計は別でお願いされるのか、なんか厨房の人たち機嫌悪いな…


HSP(繊細)気質な私にとって、飲食店でのアルバイトはとにかく情報量が多すぎた。

一つひとつじっくり考え、一人ひとりに丁寧に向き合いたくなる性格の自分には向いていない職業のひとつだと思う。
昼時の混雑をサバサバと回している街中の飲食店スタッフを心から尊敬する。定番のアルバイトだと思うけど、みんなが出来ることではないと感じる。

学生時代から、知人の紹介で和食料理屋やイタリアンレストラン、おにぎり屋さんでも働いてみたことはあるが、どれも半年と続かなかった。

それなのに性懲りもなく現在も飲食店に関わる仕事をしており、やっぱり日々疲労困憊である。

向いている仕事ではないと実感しつつ、なぜか飲食店の求人をみるとわくわくして、引き寄せられてしまうのは「美味しそうな食事」「眺める」ことがとにかく大好きだからかもしれない。

グルメ雑誌や旅行雑誌に載っている彩りゆたかな料理を見ると高揚する。
「定食」でGoogle画像検索しては、美味しそうなものをひたすら保存する。
SNSでも日々様々なご飯屋さんの画像にいいねを押しまくる。

そして、私はなぜかそれらを見て「ここ食べに行きたい!」という気持ちではなく「おんなじ盛り付けで作りたい!」という方向に感情が動く。

もちろん味も再現したい。でも、素敵な器できれいに盛り付けられた料理を見るだけで、きっと同じ料理でも美味しく感じられる魔法がかかると信じている。


「美味しい」のも幸せだけど、「美味しそう」も十分に人々を幸せにしていると思う。


そこで私は、架空の定食屋、【くるも食堂】を始めることにした。

雰囲気を出すために、箸袋やロゴもとりあえず作ってみた。

自分の食べたい料理を好きなように作り、家族にもお店のように振る舞い、本当にこんなお店があればいいなと思えるようなメニューを考える。

実際にお客さんを招くことはないけど、SNSにあげれば「美味しそう」はたくさんの人へ提供することができる。

私にとって苦手が多い飲食業において、自分の好きな部分だけを気ままに、でも真面目に突き詰めたら楽しいかもしれないな。

一見さんも百見さんも、実際のご来店はお断りだけど(笑)
こんなにSNSが盛んな時代に、見て楽しむ定食屋が紛れ込んでいてもいいのではないだろうか。

いつか誰かが「このお店どこにあるんだろう?」と真剣に検索してくれて、
「えっ、店じゃなくて家の晩ごはん?」なんて驚いてくれるような、クオリティの高い食事を用意できたら嬉しい。

料理は好きだけど、面倒な日ももちろんある。
私は冷食も総菜も、ゴリゴリに頼る。それは時に「怠惰」とか「楽をする」と批判を浴びたり、自己肯定感が下がることにも繋がったりもするけど、

「食事を用意する」ことも立派な家事であると思っている。

献立が思い浮かばない、「何食べたい?」「なんでもいい?」が一番困る。

仕事で疲れた日、休日でダラダラ何もしたくない日、体調の悪い日、Uverで何を食べるか決める体力さえ残っていない日もある。(どんだけ疲れてんねん)

自炊だろうが、総菜だろうが、誰かが食事を用意してくれることって本当にありがたい。

完璧主義な性格ゆえ、過去には毎日一汁三菜、全て手作りでないと自己嫌悪に苛まれる日もあった。

とにかく私は、美味しそうな食事を用意するのみ。余裕があれば全部作るし、やる気が出なければお惣菜を並べたっていい。今はそれくらいの気楽さも持ち合わせながら、私は自分の好きな定食屋を始めるのだ。


くるも食堂おうち本店、インスタ支店に続いて、note支店もオープンしてみた。文字で楽しむ定食屋にもなれたらいいな。


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