人を理解する|くるみ|アドテック東京2019
セッションの基本情報
・スピーカー:吉野家V字回復させた、元P&Gマーケター(ファブリーズ担当していた)の伊東正明さん
- 関連記事:https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00205/00003/
・内容:人の脳が意思決定にあたってどう動いているかを理解するためのセッション
セッションの要点
・人を理解するうえで2つのポイントをまず抑える
- 脳みそはさぼるのが基本/頭の中には情報を整理する引き出しがある
・インサイトを仮説立てたうえで、引き出しを見つけて(作って)、情報を入れてあげることでマーケティングが成り立つ
▼人の脳とブランドを買うときの関係
●人を理解するうえで抑えておくポイント2つ
①生存本能によって脳みそはさぼるようにできている
・無意識の行動には脳みそは使われていない
・情報の処理には脳みそが使われる
→生きるために脳を使いたくないので、意思決定はほとんどの場合において論理的ではなく直感的に行われる
②人の頭の中には情報を整理する引き出しがある
・どこの引き出しに入れるかわからない場合、人は忘却する
●ブランドを買わない理由は4つある
①引き出しがない:カテゴリーを必要と思っていない
・例)女性にとっての髭剃り
・ファブリーズの例)ファブリーズは生きていくために必要ではない。なので、情報の引き出し(部屋の中のにおいを取る)を作ったから売れるようになった
②引き出しを開けない:なくても困っていない←世の中で一番多い理由
・「あ、そういえば」を作らないといけない
・ファブリーズは年間数十億の広告を使っている(P&Gjapanの中でトップ4の額)
- なぜTVCMをやるのか?:使うという引き出しを開けてもらうために広告をうつ
③引き出しの手前にいない:他より役立つと思われていない/他のブランドの露出が圧倒的
④店頭理由:引き出しの問題ではない
・お店にいって、大量陳列されてるとなんとなくいいなと思ってしまうとか。TVCMでずっとみてたら、そのカテゴリーの中ではCMで見たやつを買うかーとか。
・ちなみに、伊東さんは認知より想起を信じるマーケターなので、想起を重要視する
- なぜなら、認知されていても引き出しのどこにあるかわからなかったら、すぐ思い出されない。つまり選ばれない。
★ポイント:上記4つを理解したうえで、カテゴリーの状況・ブランドの状況を考えたときにどれをやるべきか?という問いを立てる
過去の失敗例)リセッシュという競合が出た時に、ファブリーズはリセッシュよりいいでしょ!と言って市場縮小した。なぜなら問題は③ではなく②の引き出しを開けない、という話だったから
▼インサイトを理解するためには
●インサイトとは
・ボーっとしている状態から、意識を向かわせるために使うもの
・インサイトの定義
- インサイトは閉ざされた頭と心の扉を開く鍵
- 良いインサイトか悪いインサイトか見極める方法は難しい
・マックの事例
- マックに来なかった本当の理由は、「思いつかなかった」だけ
- インタビューという行為で人に嘘をつかせてしまった
- こない人にインタビューではなく、マックによくくるお客さんに聞いたら「体に悪いから食ってるんだよ」→背徳感(今回のインサイト)が肝か?と仮説を立て→クオーターパウンダーを売って大成功した
★これは、嘘ではなく、本当のことを聞いたからうまくいったケース
・伊東さんのところでは
- ノンユーザーではなく、競合ユーザー調査を実施する
- ノンユーザー調査だと先ほどのマックの事例のように失敗すると考えているため
●調査の極意
①数こなす(価値観を理解する)
・お宅訪問でお客様を理解する
★ポイント:洗濯は家事の一環なので、その人にとって家事はどういうものか?を理解する
ボールドユーザーだと分かった例
・家事を効率化したい→柔軟剤がはいっている洗濯洗剤を入れたくなる・白だと汚れが目立つから色柄物の服を買わせる
・つまり、この人にとって良い洗剤は汚れが落ちるとかではなくて、匂いとか手触りとかの方を重要視する可能性がある
アリエールだと分かった例
・玄関に靴がない、サンがきれい
・自分は怠け者だと言う
・この人は完璧でありたい、きれいでありたい、家事に完璧さを求める
②定性調査をしているとき話をきちんと聞いているか?(仮説構築)
・やったこと:対象の人の、靴とかバッグとかを見る
→こんな人だろうと想像をつける
→このパターンがあてはまるだろうとあたりをつける
→これをやってから、インタビューをする
★ポイント:答えはないので深く深く見る
▼学び
Q.人を理解したマーケティング活動を行うためには?
・決めつけず、徹底的にユーザーの価値観を深ぼる
- 深ぼるためには、あたりをつけて(仮説構築)→検証→振り返りのサイクルを回しまくることが大事
・競合や外部要因にだけ目を向けるのではなく、カテゴリーやブランドの状況に立ち返って最適な手段を選ぶ姿勢を心掛ける