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名作ボディコピーを味わう時間12日目 -土曜のイヴは六年来ない。 -

毎日ひとつずつ「名作ボディコピーを味わう時間」と称して、
好きなボディコピーを紹介していきます。
(なかなか毎日、できてなくてすみません!息長く、続けていけたらと思います!)

12日目のボディコピーは、「家」に関するこちらになります!

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画像:『名作コピーの教え』
広告主:積水ハウスさん
コピーライター:岩崎俊一さん
1988年

これを読み解くと…

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※コピーは『幸福を見つめるコピー』から写経しているため、画像のコピーと一か所だけ違うところがあります。

一見、ふつうの一人称のボディーコピーかなと思いつつ、
どうやらこれは君にあてたお手紙っぽい・・・
そして、最後に「お正月は、全員でわが家に来てください。」と書いてあることで新築のわが家への招待状だとわかりました。

読む人はいつだって単独で読む。
だからこそ「手紙」でキャッチボールする。


もともと岩崎さんは夏目漱石や、井上靖が好きで、手紙文の小説に感銘を受けて、いつか手紙のようなコピーを書きたいと思っていたそう。
企画書もいつも手紙を書くつもりで書いていた岩崎さん。
岩崎さんの書かれた企画書を読んでみたい人生です。

広告の読み手はもちろん一人、だけじゃないです。

でも読むとき、
そこから何かを感じるとき、
ってひとりっきりのときが多いですよね。

だから「手紙を書くつもり」でボディコピーを書いてみる

「手紙」ならではの良さを体感したのでそのことについて。
話せたらなと思います。

今回のボディコピーの最初の最初は、「土曜のイヴは六年来ない。」。
「イヴ」もはいってるし、もしかしてちょっと新しい時候の挨拶かもしれない…!?と個人的には思いました。

(※いまさらながら、なんでいつも季節のあいさつを手紙の最初に入れるんだろう?と思ってましたが、季節のあいさつって間違いなく共通話題であたりさわりなくてアイスブレイクとしてほしいのかも。普段はなすときもいきなり本題から入ることって少ないですしね。
桜が咲く季節となりましたとか、そのアイスブレイクで自然を感じられたら相手の心をほぐせたら、という粋なはからいだったんだ、これは!!!という発見。ちょっとひとりごと。)

その次に家族の話。突然風物の描写を入れる。
「今年の土曜日は~はしゃぎ声で答えています。」
風物の描写があることで、読み進めるクッションになるし、イメージも膨らんでいく。

娘がいて、女房がいて、息子がいて、もう一人子供がいて。「珍しく一家五人がそろうかも」で、語り手の「ぼく」は普段仕事に忙しそうな方であることがスーッとイメージできます。
長男も二十二ということで、50代くらいかな?
これを読んだターゲットの人たちは、きっと、自分に手繰り寄せて読み進められそう。想像を膨らませて、ひきこまれ始める。

「どこかさびしい」「ずっとこのままでいられたら」と、素直な気持ちを伝えてるのも、あとから見ると手紙ならではな気がして、ホントっぽさが生まれる、生っぽいものを感じられる。

「君に笑われそうな空想をしたりすることもあります」、で初めて「ぼく」と家族以外が登場して、どうやらこの文章は「君」にあてられているものだと気づきます。
昔の話を持ち出す、親しい友人の間柄の手紙だとよくありそう。急に過去を持ち出されても全然おかしくない。もっというと、ひきこまれる。そんな思い出話。

そして最後にこれからの話が。
「お正月は、全員でわが家に来てください。」と招待で締めくくり。これまで、です/ますだったのに、○○してくださいという要望調の文言が最後に来ることで変化が大きくつけられ、迫ってくる気がする。
手紙を読み始めた時は、どこかちょっと遠い存在だったのに、気づいたらぎゅっと距離を詰められてきた。いやな感じというよりかはむしろ嬉しいような詰め方。



そういえば、わたしは手紙を書くのが得意、と思っていたんですけど(特技を聞かれて、手紙を書くことと答えて周りは反応に困っていました。笑)
それは、読み手たった一人のことだけを考えて考えて、キャッチボールをしたいという気持ちで書いてるから、手紙だと伝わるのかなあって思いました。

ボディコピーだけじゃなくて、文章は読み手と書き手のキャッチボールであることを忘れずに。でも具体的な一人へのお手紙じゃなくなった瞬間書くのが難しくなっちゃいますね…!想像力がもっと、必要になってくる。


お手紙のように、
今日も読んでくれる、あなたの顔を思い浮かべながら
書いていきたい。

また次も、お会いできたら!

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くるみ
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