諦める権利 Vol.1
私は車椅子シーティングエンジニアとして様々な車椅子ユーザーとご家族に会ってきました。その中には、小学生の車椅子ユーザーとお母さまも、成人になってから事故や病気で初めて車椅子を入手する方も、介護保険での高齢者の利用者さんとご家族、ケアマネさんもいます。
その中で私が疑問に思うのは、介護保険の現場での「諦め」について考えたいと思います。(ちなみに私は、福祉用具専門相談員、ケアマネの経験を持ち、現在は介護家族でもあります)
車椅子ユーザーのお子さんを持つご家族は、若いということもありエネルギッシュです。疾患や車椅子についての情報収集もしていますし、要求も高いです。
しかし、介護保険になると事情が大きく異なります。
多くの場合、家族は40歳代以上、配偶者であることも少なくありません。ケアマネさんや契約をしている福祉用具専門相談員に相談をすることで問題解決の方法を集める方が多く、ご自身で情報収集をする方はあまりいません。
あるいは、介護保険が複雑すぎるということも利用者やご家族が受け身にならざるを得ない原因かもしれません。いずれにしても、ケアマネさんや関わっている介護サービス事業所の方の存在が大きくなります。
この時、ケアマネさんや福祉用具専門相談員が解決策を提案できるならいいのですが、私は介護現場でこんな言葉をよく耳にしました。
「齢だから、病気になったから仕方ない」
本人や家族が言うのなら頷けます。しかし、時にはケアマネさんがこの言葉を口にするのも見てきました。
「○○だから仕方ない」というのは、それを解決するための選択肢を探すことも考えることも放棄するという言葉です。私はいつも疑問に感じずにはいられません。なぜなら、その解決策を私自身が持っているケースがたくさんあったからです。
つまり私自身にとっては当たり前のサービスについて、別の介護現場では「仕方ない」と放置されているのです。
諦める権利は、誰に帰属するのだろうか?
利用者や家族からすると、介護のプロであるケアマネさんから「仕方ない」と言われてしまうと多くの人は探すことさえしないでしょう。今の介護だけでも手一杯で、ネットで情報を集めたり、人とつながったりというところまで余力がないのだと思います。
それを考えた場合、ケアマネは情報収集にもっと戦略的に時間とエネルギーを費やすべきなのでしょう。地域の情報、社会の動向、まだ普及する前の先端技術や医療、脳科学やコミュニケーションスキルなど。そうすると、発する言葉も変わってくるはずです。
「介護保険ではカバーできませんが、○○という会社が・・」
「今は実用まで至っていませんが、近い将来、○○の可能性があります。ですから、今から○○しておきませんか」
など。「○○だから仕方ない」以外の言葉でコミュニケーションを始めませんか?
今、私たちは社会の大きな転換期にいます。エネルギーも金融も医療も、ありとあらゆるものが大きく変革しようとしています。そして、介護保険を利用する方々も変わります。
お子さんが車椅子ユーザーの場合、お母さまは将来を考えます。同じように、介護保険の利用者にも未来があることを視野にいれる時代だと考えています。今は平均7年程度の要介護生活です。しかし、これからはさらに伸びることが予想だれます。歳だからと諦めるほど介護生活の時間は短くありません。
あるいは、再生医療、遺伝子医療によって治療できるかもしれない。これまでの延長線上ではない未来が起こる可能性が出てきています。
様々な可能性を考慮した上でのケアプランを組んでいるでしょうか。
今の「仕方ない」が、利用者の今の生活に必要以上の苦痛を与えていないか。あるいは、未来の可能性を閉ざしてはいないか。
もちろん、ケアマネは万能ではありません。私がケアマネをしていた時も満足な情報収集はしていませんでした。ならば
せめて、「今は・・」「私の知っている限りでは・・」など、余白を残したコミュニケーションを始めてみてはいかがでしょうか。
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