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多分、まだはやい。【リップヴァンウィンクルの花嫁感想】

こんにちは、ゆきみだいふくです。
今日は黒木華主演の「リップヴァンウィンクルの花嫁」という映画の感想を。

幸せとは何か、生きづらさとは何かの一端に触れる事が出来る映画です。

この映画はわからない事だらけだ

私は、主人公の七海のように愚直に生きれるだろうか?

真白のように死の淵に立っても仕事を全うし生きた証を残したいと思う強さはあるだろうか?

多分、21年しか生きておらず死という存在もどこか他人事に感じている私には、
彼女達の生き方や美しさを認識は出来ても理解はできていません。

それどころかこの物語のエンディングはハッピーエンドなのかどうかも分かりません。


分からないけど、分からないなりにこのnoteを通して咀嚼していきたいと思います。

ストーリー

主人公の蜷川七海(黒木華)はアプリで出会った男と結婚。その際にSNSを通して知り合った「ランバラルの友人」を名乗る何でも屋・安室行舛(綾野剛)に親戚の代行を頼む。これをきっかけに離婚・正体不明の女性真白(Cocco)との出会いなど「人並み」に生きてきた彼女は安室に導かれるように思いも寄らない道を歩んでいく。

安室行舛という男

最初から最後まで安室行舛という人間が分かりませんでした。会うたびに服装の系統も異なる軽薄そうな雰囲気で胡散臭さぷんぷんな何でも屋。

最初から胡散臭さはありましたが、七海がある一件で安室に救われたと思ったら全部安室の罠だった事が分かってからの気味悪さは鳥肌もの。
七海は何も知らずにずっと安室を頼るけれど、視聴者はずっと全部安室に仕組まれてるんじゃないか?安室の発言は全部嘘なんじゃないか?と疑心暗鬼になります。
あの何を考えているか分からない気味悪さや冷え切った目の奥は綾野剛にしか出せないと思います。

安室の目的はなんだったのか。
七海を罠に嵌めて離婚に追い込み、住み込みメイドと騙して1000万で彼女の死を容認しました。
でも安室によって彼女は「人並み」から外れた自分の道を歩み出す事ができた事も事実。

安室は七海を食いものにしただけなのか、それとも彼女が生きる推進力になり得たのか、最後まで見てもずっと分からないままです。

七海と真白

幸せを求める七海と幸せの限界を恐れる真白の関係は共依存なのか恋愛なのか。

大きなお屋敷で暮らす2人。
ウェディングドレスを着て写真を撮る2人。
同じベッドで手を繋いで眠る2人。

ウェディングドレスを着て同じベッドで手を繋いで眠ったあの瞬間、真白は幸せだったのか。
幸せが怖いからせめてお金で買うのだと言った彼女は、確かに七海の時間も買っていました。

きっと彼女にとって幸せとは、「すぐ近くにたくさんあるけど自分には分不相応なもの」だったのだと思います。だから対価も払うし、払うからこそ奔放に動く事が出来る。

一方で七海にとっての幸せは、「自分が手に入れるべきだったもの」であり、進むはずのレールから外れてしまってからは「闇雲に進んだ先にあるかもしれない何か」なのだと思います。

「人並み」を求めて感情をある程度殺し仕事や結婚をした七海にとって家からの追放は、人並みというレールから外れる事に他なりません。
自分の足で歩まなければいけなくなった彼女にとって幸せは、正解もなければどんなものかも分からないものになりました。

でもだからこそ、レールから外れたあとの彼女はどうにかして生きようとするし表情も豊かになっていくんだと思います。


周りを見て空気読みながら生きていくのも大事だけど、でもやっぱりそれってどこか生きづらさがあるんです。

人生にも幸せにも正解もなければ普通もない。
七海と真白が幸せだったのかなんて他人には分からないし決める事でも無いという事をこの映画に突きつけられた気がします。

安室という結局何も分からない男や彼女達の行動など多くの謎が残り、解釈が視聴者に委ねられたこの映画は、視聴者の咀嚼の仕方によって万華鏡のようにくるくると性格が変わるのでしょう。

今の映画やドラマは、台詞を通して詳細に説明してくれて簡単に正解の解釈を教えてくれます。
それはそれで良さはあるけれど、私はこの映画が持つ余白と自由さがとても豊かなものに感じました。

21歳の私には100%の理解はできなかったけれど、もう少し自分の幸せの形が固まったらもっと面白みが分かって登場人物の気持ちが理解できるのかもしれない。
未来の私がどんな解釈でこの映画と向き合うのか楽しみになる、そんな映画でした。

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