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『大英博物館 北斎 -国内の肉筆画の名品とともに-』サントリー美術館


今回は大英博物館所蔵の800点以上の北斎コレクションの中から約110点が展示される、いつもの北斎展とはちょっと違った視点の展覧会。


2021年7月の『北斎づくし』展で、もう北斎はお腹いっぱいと思っていたけど、、、

とんでもなかった!!!!

北斎、やっぱり凄いね(心底)

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さて、この日はスライドレクチャーにも参加させてもらったのですーー!!!

そこで主任学芸員の池田茉美さんに解説していただいたことを踏まえつつ、展覧会を振り返っていくよーーー\(^o^)/


まず驚いたのが音声ガイド!!!
なんと田中泯さん!!!
映画「HOKUSAI」で晩年の北斎役を演じられいたあの田中泯さんですよ!!!

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田中泯さんのお声をイヤホンで聴いたことあります?!
いやもう、とんでもない殺傷力で、何度腰砕けになるかと、、、、💦

玉川砂記子さんが説明部分のナレーションをしてくれているので、かろうじて音声ガイドというテイを保ってましたが、田中泯さんだけだったらもうそれは美術館というより劇場になってしまうほどの濃密な演劇感。

そんな贅沢な音声ガイドとともにGO!!!!


第1章 画壇への登場からの還暦


今回は、数多くの代表作が生み出された60~90歳の30年間に焦点をあてている展示となっているらしいんだけど、最初の作品は

「市川鰕蔵の山賊実は文覚上人」
勝川春章門下時代の影響が残る貴重な初期作品。

文覚上人といえば、今や鎌倉殿の13人でお馴染みの!!!
そう!!胡散臭さ満載のあのお坊さん。
鎌倉殿では猿之助丈が演じているけど、こちらは成田屋さんの文覚上人。

「梅樹図」
琳派を模していると言われている作品。
めっちゃ琳派み。

「為朝図」
展示作品のうち2枚だけ写真OKだったうちの1枚。

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版元の平林庄五郎が「椿説弓張月 NO.7」の完成を祝って注文したもの。
漢詩を寄せているのは著者の曲亭馬琴。

そう!馬琴と北斎といえば大人気のゴールデンコンビ✨
「椿説弓張月」はもちろん、コンビでの第1作となる「新編水滸画伝」からすでに凄かった。

これは「北斎づくし」に展示してあった挿絵のページ⤵️

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ほんとに現代の漫画と遜色ないの!

すごい売れただろうし、そりゃ版元も金の切箔が施された豪華な作品を注文しちゃうよね!!


第2章 富士と大波


「冨嶽三十六景」は36図と あまりに人気シリーズだったので後から足した10図で、
実際は46図ある。

今回の特別展では、その中でも人気の【三役】と呼ばれる3作品が揃い踏み!!!!!🗻✨

ナミウラこと「神奈川沖浪裏」

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(波裏は撮影可)


赤富士こと「凱風快晴」

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(東京富士美術館HPより)


黒富士こと「山下白雨」

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(東京富士美術館HPより)


冨嶽三十六景は所謂「北斎ブルー」と言われる青色で摺られている。

・主版(りんかく線)を、本藍
・面の部分やぼかしなどを、ペルシアンブルー(ベロ藍)

初期のグループはほぼ藍摺一色。

但し、追加で出版されたものは、りんかく線に黒を使っていて、これを【裏富士】などと言われているそう。


大英博物館所蔵の北斎コレクションは、とにかく摺りの状態が大変良いそう。

そう。私は「北斎づくし」で知ったのだ。
初摺と後摺では絵が大きく違ってくることを!

北斎漫画 九編 (「北斎づくし」展より)

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この3人の人物、初摺(上段)では表情も細かく線も綺麗だが、後摺(下段)だと線が緩み、涼しげな目元も黒い瞳も溶けてしまって顔が違っている。

作品に人気が出て摺りを重ねるほど 版木は摩耗し、線の鋭さや本来の魅力が失われてしまう。
摺るほどに版木は減ってしまうがゆえの変化。

なので大英博物館の「摺の状態の良い作品」はとても貴重だということ✨


第3章 目に見える世界


北斎の風景や景色を描いたシリーズを展示。

ただし、北斎はその場所に行って忠実に写生をしたわけではないそう。
例えば「冨嶽三十六景 尾州不二見原」

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これもこういう場所が実際にあるわけではないし、樽が名産なわけでもない。
樽から富士山が見えるこの構図のために描かれたのではないかと言われているそう。

なのでこのコーナーに展示されていた
「諸国瀧廻り」シリーズ
「諸国名橋奇覧」シリーズ
どちらにも絵を面白くするちょっとしたフィクションや物語性が入っている。


諸国瀧廻り 木曾海道小野ノ瀑布

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諸国瀧廻り 和州吉野義経馬洗滝

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吉野の滝で義経の馬を洗う従者たち。
音声ガイドの田中泯さんは大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で、義経を養父的存在の藤原秀衡を演じてらっしゃるからなんだかタイムリー✨


諸国瀧廻り 美濃ノ国養老の滝

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諸国瀧廻りシリーズは、藍色の涼やかさと、直線的に描かれる水の強さを感じとれる。


諸国名橋奇覧シリーズは、諸国瀧廻りシリーズのように風景のなかに橋がある。
まるで写生のように描かれているが実際には有り得ない風景や景色もあって見ていて楽しい。

そんな風景画が続いたところあとに
「花鳥図」の展示が。
花も鳥も繊細で色合いも綺麗。
なにより可愛らしい。


第4章 想像の世界


物語や怪談の世界を描いたシリーズが並ぶ。

「百人一首うばがゑとき」シリーズは
北斎最後のシリーズもの。
27図。(下図は91図くらいあるらしい)

「百物語」は、100と言いながら5図くらいしか残ってない。
北斎と言えども途中で終わる企画もある!とのこと😁

その5図のうちの2作品が今回展示されている。
「百物語 こはだ小平二」
「百物語 笑ひはんにや」


第5章 北斎の周辺


北斎の娘の 葛飾応為 は美人画を得意としていたそう。
今回は「女重宝記」が展示されている。

北斎と応為というと、すみだ北斎美術館の蝋人形を思い出すよね。

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何度見ても怖いんだよなあ。←


第6章 神の領域-肉筆画の名品-


個人的に、私はこのコーナーが1番好きだった!!

やっぱり肉筆画が好きだ。

肉筆画は国内の作品が多かったけど、大英博物館もいいもの持ってたー!

「流水に鴨図」

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入口のバナーにもなってたね

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北斎の肉筆画としては特に代表的な作品で
88歳に描かれたもの。
鴨の藍色が鮮やかで、流れる水の描写が素晴らしい。


「白拍子図」は、静御前をモチーフにしているそう。またしても義経つながり✨
北斎の肉筆画の美人画は、浮世絵の美人とは違ってて、記号的な美しさではないんだなあ。好き。

「若衆図」は何度見もしちゃった。
良い美人画を描く人は、綺麗な男性も綺麗に描くよねえ☺️
当時は、 パトロンがご自慢の陰間を絵師に描かせたんだとか。


肉筆画は一点ものという重みもあるし、やっぱり版画より色が多くて深いからじっくり見ちゃう。

このコーナーでの田中泯さんの語りも良いのよーー!!


90歳で亡くなった北斎。
88歳の作品数が1番多いそう。

すごすぎるやろ、、、、

北斎の展覧会って、最終的に「北斎すげー、、」ってなるのね。毎回。

今回も圧倒されました🙏✨

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