重伝建地区の旅 倉敷美観地区
さて、私が訪ね歩いた重伝建地区を紹介してゆきます。
重伝建地区の旅、最初は我が家から最も近い重伝建地区であり、岡山県で最も観光客が多い倉敷美観地区から始めます。
重伝建地区についてザックリ説明した記事は以外の通りです。
地区の概要
名称:倉敷市倉敷川畔
種別:商家町
選定年月日:1979年(昭和54年)5月21日
選定基準:(一)
面積:15.0ha
この地区は観光地としては一般的に「倉敷美観地区」と呼ばれていますが、重伝建地区の名称は「倉敷市倉敷川畔重要伝統的建築物群保存地区」といいます。
倉敷川沿いに白壁が美しい蔵が建ち並ぶ街です。
エリアには倉敷紡績(クラボウ)で財をなした大原孫三郎が建てた近代絵画の私立美術館・大原美術館もあります。大原美術館は日本初の私立美術館なんですね。1930年(昭和5年)の設立だそうです。
倉敷美観地区観光の目玉の一つです。
歴史
「倉敷」は広辞苑によれば「荘園から年貢などを輸送する際に一時保管しておく場所」「倉庫料の略」とあり倉敷市を指す固有名詞である前に、普通名詞なのです。
つまり、普通名詞がそのまま使われている珍しい地名というわけですね。
江戸時代前期の1642年(寛永19年)、この地は天領(徳川幕府の直轄領)となり代官所が置かれます。そして、天領で取れた年貢米は大坂の蔵に送る前の集積地として米蔵が建ち並びます。中世には荘園で取れた米の集積地でもあったようです。
これには倉敷川が大きく関わっています。この辺りは瀬戸内海のなかでも更に内海で浅瀬が多いので干満差が激しく、倉敷川は水運の利便性が良く舟が多く行き来していたので、この地が集積地として選ばれました。
この辺りの海は浅瀬が多かったため干拓が盛んに行われました。干拓地は直ぐには米作には適さず綿花栽培が行われました。このため、倉敷は綿の集積地ともなりました。
やがて明治時代になると天領としての役割を終え次第に寂れてゆきましたが、庄屋となっていた大原家が中心となり代官所跡に紡績工場を構えます。これが倉敷紡績の始まりです。そうして倉敷市は綿織物の産地となり再び活気を取り戻し、現在見られる江戸時代から大正時代頃にかけての町並みが形成されました。
街並み
倉敷川畔重伝建地区は、倉敷川の川沿いの両岸に建ち並ぶ土蔵と商家を中心に、それに並行して北側にある本通り、本通りの北の鶴形山の丘陵上にある倉敷の総鎮守の阿智神社とで構成されています。
建物は米と綿が集積する商業の街であったため、町屋と蔵を主体とした街並みとなっています。
また、明治期以降に建てられた擬洋風建築も建てられており、旧倉敷町役場(現・倉敷館)は街のシンボル的存在となっています。
特徴
町屋は本瓦葺塗屋造りの厨子(つし)二階建てで切妻平入りとなっています。一階の開口部には「倉敷格子」と呼ばれる親付切子格子がはめられています。二階には「倉敷窓」と呼ばれる格子窓が取り付けられています。明治時代になると京阪神地区の影響で虫籠(むしこ)窓も取り入れられるようになります。
蔵は土塗り白漆喰仕上げの土蔵造りで、更に耐火性を高めるために瓦を貼り付けた海鼠壁となっています。
主な見どころ
大原美術館
地区の概要でもご紹介したとおり、当時、倉敷紡績の社長だった大原孫三郎が1930年(昭和5年)に設立した日本初の私立美術館で西洋美術、近代美術の美術館としても日本初でした。
エル・グレコ、モネ、ピカソ、ゴーギャン、ルノワール、ロダンなどの名品が展示されています。孫三郎がパトロンとなっていた岡山県出身の画家・児島虎次郎に収集させたのですが開館の1年前、1929年(昭和4年)に虎次郎は死去し、これを悲しんだ孫三郎が虎次郎の死の翌年に開館に踏み切りました。
入館料は2024年1月現在、大人2,000円、小学生以上18歳未満は500円です。
大原本邸(旧大原家住宅)
倉敷の地主で幕末には大庄屋となり倉敷紡績・クラレの社長をつとめた大原家の住宅で倉敷川を挟んで大原美術館の向かいに建っています。美術館前の今橋を渡るとすぐです。幕末から大正時代にかけての建物があり、国の重要文化財に指定されています。
入場料は2024年1月現在、大人500円、小学生~高校生400円です。
倉敷館(旧倉敷町役場)
擬洋風建築で北西から南東に流れていた倉敷川が流れを北から南に変える場所の南側に建っており、倉敷美観地区のシンボル的存在です。
現在は観光案内所と無料休憩所になっておりコインロッカーやトイレもあります。
倉敷民芸館
江戸時代に建てられた米蔵の中を改装して、世界中の暮らしで使われる品々を展示しています。倉敷川を挟んで倉敷館の向かいに建っており、倉敷館前の中橋を渡ってすぐです。倉敷美観地区のシンボル的存在の一つです。
入館料は2024年1月現在、大人1,000円、高・大学生400円、小・中学生300円です。
有隣荘
大原美術館の別館で緑色の瓦が特徴的な家屋です。大原邸の別邸兼迎賓館として大原本家の隣に建てられました。普段は外観のみしか見られませんが、春と秋には特別公開があります。
井上家住宅
倉敷川沿いではなくその北側にある本通りにある大型の町屋です。母屋は1721年(享保6年)に建てられた、この地区最古の建物です。国の重要文化財に指定されています。
井上家は、古禄(ころく)と呼ばれる古くから村役人となる資格がある13軒のうちの1軒でした。
入場料は2024年1月現在、大人500円、小・中学生300円です。
くらしき川舟流し
定員6名の川舟で船頭の話を聞きながら、ゆったりと倉敷川の美観地区エリア内を進みます。
料金は2024年1月現在、大人500円、5歳〜小学生以下250円です。
倉敷館でチケットを販売しています。
その他
重伝建地区には入っていませんが、旧倉敷紡績工場跡の倉敷アイビースクエアや、大原家と同じく大庄屋だった大橋家住宅(国の重要文化財)がありますので、足を伸ばして見るのもよいでしょう。
なお、「重伝建地区の旅」の冒頭で書いたとおりPIXTA用の撮影がメインなので記事用の画像はほんの数枚です。
当地区を撮影した様々な画像は、こちらをご覧下さい。
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