蝶塚への想い
はじめに
文学フリマ東京37で刊行させていただいた、新刊「蝶塚」について語ろうかと。強い想いはあとがきに記載していますので、ここでは想いをつらつらと。
本当は宣伝っぽいことを書いた方がいいのでしょうが、私の場合、制作は基本的に自己満足なので。
世界観等はこちらを参照ください。
Kindleでの購入はこちら。
また、12/3(日)のコミティアでも少数ですが販売しますので、文フリでお会いできなかった方は是非とも!
一応、ネタバレなしなので、これで興味を持っていただいたらコミティア、またはKindleで。
各章のあらすじ
X(Twitter)で宣伝用に流していた一連のあらすじを再掲します。Twitter用なので短いです。
【蝶塚 壱話 粗筋】
僻地に居を構える畸型兒専門家医師 唐蔵妙(カラクラ ミョウ)の元に一人の患者がやってきた。
彼女の症状は半透徹病。体に"透明"と云う色素が現れる畸型病である。
彼女の治療を開始する妙であるが、同時に完全透徹病の患者も現れる。
【蝶塚 弐話 粗筋】
とある士族の長、鏡琴一弐(キョウゴト イチジ)の元に怪しげな薬師がやってきた。彼が云うには、その薬を飲むと蟲になれると云う。
一弐は希死念慮が強いが死が怖い。蟲になれば、死を恐れず死ねるのではないか。一弐は、その薬に手を伸ばした。
【蝶塚 参話 粗筋】
僻地に存在する診療所には、今日も患者がやってくる。治癒能力を持つ診療所の主は、畸型兒を自分の能力で治そうとするが、難しい。畸型兒を技術の力で直す、地域で唯一の機械技師 常戸夕埜(トキワド ユノ)の元へ協力を仰ぎに行く。
【蝶塚 肆話 粗筋】
刀匠の八双寺鎖雲(ヤソウジ サクモ)の婚約者は今年で七つになる。七つになったら、氏神様に御礼をしなければならない。
しかし、この地域の氏神様は、畸型兒を手放したくないようだ。畸型兒である婚約者は、氏神様に気に入られーー。
【蝶塚 伍話 粗筋】
僻地に棲む鬼のお話。
鬼は人を食べなければ生きていけない。
僻地の氏神様のお話。
氏神様は、死んだ友人に会いたいから、この土地の力を妖怪に分け与える。
本当か嘘か解らない、御伽話。
蝶塚と云う物語の成り立ち
X(Twitter)で偶に発言したりしていましたが、本作は私の創作人生の処女作を形にしたものになります。
中学時代から執筆し、高校時代に出版社に持ち込みし、ずっとずっと温めてきた物語になります。ですから、正直形にしようとした時には矛盾はあるわ、色んな作品に影響受けた影があるわでボロボロな感じでした。
そもそも、歴史とか云う学問を最大に苦手としている自分が、なぜ明治時代なんかを舞台にしたのか。
時代考証なんてしていないので、雰囲気です、雰囲気。和風「ファンタジー」です、という寛大なお心で触れ合っていただければと思います。
物語には、神崎ユウと云う個が非常に反映されていまして、第一話「透徹」の裏テーマには「血の繋がらない家族」と云うものがあります。
当時(今も)、両親とうまくいっていなかった私は、家族と云う「血」のみで繋がった人たちに懐疑的でした。彼らは「血」が繋がっていることを盾に、何でもしていいと思っているのではと思っていました。
なので、第一話は家族と云う関係が形成されているけれど、全員血が繋がっていないのです。
第二話「碧血」については、これもTwitterで語っているのと、スピンオフフリゲでも同じ病を題材にしていることから察せると思うのですが、私は兎角兎角、蟲が好きです。そして、大絶賛厨二病かつ親とうまくいってなかったこともあり、当時は結構な希死念慮を持ってました。
この物語の主人公「一弐」は過去の私であり、死にたいけど死ぬのが怖い、だったら死ぬのが怖くなくなればいいのでは? と結構ガチで思ってました。
また、二話には昆虫蒐集家と共に漢字蒐集家が出てきます。この漢字蒐集家が生まれたのは、「辞書を蒐集する人が居る」と云う事実を知った時でした。しかも第何版とか、同じ辞書の版数違いのコレクターですよ。狂って…いや、素敵な趣味だと思うのですよ。
第三話「花火」ですが、こちらは難産でした。四・五話は描き終わっており、一・二話と四・五話のつなぎとなる三話です。
何度も何度も書き直して、何度もボツになり、何度も色んな病を生み出しました。ここで登場させる必要があるのは、五話につながる常戸夕埜と云う機械技師と、九狐の鎖雲への想い。
その物語を彩る、影と花火。
影も花火も日本って感じで素敵ですよね。
第四話「時刻刻々、水のよう。」はタイトルからして異質になってます。
これは妙とは遠く離れた場所での物語。そして全ての元凶。
テーマは七五三で、人が神から離れるタイミングの話。
でも、この土地の神様は畸型兒を愛しすぎている。
神と人間と、その間の愛と友情。好きなものを詰め込んでいる話になります。
第五話「鬼の話」。
これは後世に残るこの土地のお話。鬼、氏神様、妖怪。それはこの物語に出てくる誰かの話。
その誰かはみんな、個人ではなく概念として後世に語られる。
彼らが一体どんな風に語られているのか。是非ご覧あれ。
終わりに
蝶塚は初版20冊です(見本含めて25冊くらいあった気がする)。これを完売したら、短編小説を刊行しようと思っています。
多分Twitterで発言していた気がしますが、長く構想している物語なので、ボツになった物語や病が沢山あります。
その中でも、気に入っているのが「竹に恋をする」話です。自分の実家は竹林がありまして、非常に身近な存在でした。竹林の中ってなんかこう、清涼感があるというか、不思議な感じがします。
あとは、自分は食べることが好きなので、皆既日食/皆既月食をテーマにした「皆既摂食病」とか。
蝶塚は一旦終わりですが、目標を達成した暁には、次は和綴の本で出したいな!!