3行日記(純喫茶、青のり、蝉の幼虫)
七月十五日(土)、晴れ。
夕方、祇園祭の宵宵山、すごい人なので、蟷螂山だけかすめて逃げるように退散。七条の商店街の夏祭りのほうへ。途中、ガラス窓を開ける対面式のタバコ屋と並んだ渋い喫茶店を見つけ、暑さを避けるために入った。先ほどまでの祭りの喧騒が嘘のように、昭和の雰囲気をとどめた静かな空間だった。昨年もそうだったが、祇園祭の日は暑さと人の多さでくたくたになりながらも、最後の最後に、こういう特別なお店に出会うことになっているようだ。
七条の商店街、地元の小学生が祭りの出店を手伝っていた。たこせんの店を担当していた男の子は、天かすを降って、マヨネーズを垂らして、青のりを散らして、一人三役。手のひらは青のりにまみれ緑色に染まっていた。
夜、丹波口近くの街中華で、焼餃子、酢豚、エビチリ、カニあんかけ炒飯、げその唐揚げ。お兄ちゃん、お皿足らんかったらゆうてくださいね。お皿足りてる? ここ置いとくわね。うろうろしてごめんね。暑いからな、熱中症対策してな。店のおばちゃんがいい味だしてる。続いて、壁の向こうから客の声が聞こえる。びーえす、びーえす、大谷の試合はびーえす。ちがうて、おれきょう昼間に見たんや、えぬえちけー総合やってん、ちがう! びーえす、大谷はびーえす!
JRを乗り継いで帰宅し、チャックの散歩へ。右前足が痛いようで、びっこをひいて歩いてゆく。神社の境内で、蝉の幼虫がコンクリートの上でじたばたしていた。羽化するための樹を探している途中でひっくり返ってしまったようだ。近くに落ちていた枝にしがみつかせ、近くの幹に運んであげた。明日あたり、あのとき助けていただいた蝉です、と樹液をもってくるにちがいない。