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Audible『硫黄島上陸 友軍ハ地下ニ在リ』酒井聡平(2023・講談社)

なぜ日本兵1万人が消えたままなのか?
滑走路下にいるのか、それとも……
民間人の上陸が原則禁止された硫黄島に4度上陸し、
日米の機密文書も徹底調査。
新聞記者が執念でたどりついた「真実」。

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小説のネタバレとは違うのかもしれないけれど、酒井先生の辿りついた「真実」については触れないでおきます。たいへん面白かったのでぜひ読んでみてどーぞ。

硫黄島返還後に編成された調査団には、陸海軍の元将校さんたちが選抜された。(なんていうか、納得の人選です・・・・)
彼らの残した記録が物凄く印象的だったので以下抜粋。

『洞窟の中では白骨が巻脚絆を巻いたまま折り重なって、本当に足の踏む場所もないところもあり、担架に寝たままで横たわっている姿もあり、拳銃で、また手榴弾で自らの命を絶った跡をそのまま示しているものも見られ、(中略)思わず目を背けることが度々であった。従って遺族としてはこの光景に到底耐え得られないと考える。
しかしその洞窟より外界に出ればジャングルの木漏れ日、小鳥の声、(中略)疾駆する自動車の音、全く悪夢から覚めたような感に打たれる。』

『平和な村、平和な街でも、もし仮にその墓地を暴いたとしたらそこには悲惨な世界も覗くことはできるであろう。ただその村、また街とこの島が違っているところは、この幽冥の境に前者はきまりがつけられ、道徳的な、また宗教的なしっかりした扉があるに反し、後者はきまりがつけられておらず、その扉がたてられていないということにある。』

幽冥=冥土と現世という意味だそうです。

『硫黄島はあの世とこの世の境がない超常的な島』。
団員たちは以下のように訴える。

『政府としてはどうしてもこの遺体を収容し多数の霊を内地に迎え入れ、そしてこの島に幽冥のきまりをつけ、その扉をたてなければならないと思う。』

けじめをつけるっていうのは、やはり大切なことなのだ。


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