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【放送大学/まとめノート】総合人類学としてのヒト学(’18)第1回 地球におけるヒトの存在 / 高倉浩樹客員教授

キーワード

エネルギー連鎖 食糧生産 エネルギー利用としての文化

目標&ポイント

  1. ヒト 文化的存在 生物

  2. 独自のエネルギー連鎖を形成(農業革命・産業革命を経て)

  3. エネルギー 身体の栄養源 社会を支える動力源

  4. 文化をエネルギー利用の観点から見る 地球における人の存在を鳥瞰する視点 地球環境問題と人類史を関連付けて理解


1.太陽の恵み

ヒト=生態系の中で生息している動物のひとつ。だが特殊。
 ・地球全域に渡って分布
 ・自ら生態系を作り出す
   例)田んぼ(作物を軸に虫・カエル・魚・鳥。≠原自然)
     石油エネルギーの利用 車・機械
     プラスチック製品
     通信網 電話・インターネット
 ・太陽の恵み必須

生態系といえば、動植物や微生物の食物連鎖の関係を考えると思うが、より正確にはその中には水や大気などの無生物を含めた物質循環が存在している。この物質循環を作り出す大元は太陽から発せられる光と熱のエネルギーである。お風呂で湯沸かしすれば、水の対流が生じるように、地球の大気や水の動きは太陽によってつくられ、ヒトの文明社会はその土台の上に成り立っているのである。

ヒトとその社会は太陽の恩恵を受けて存在している。
地球のエネルギー循環が、ヒトの生命・文化を維持してくれる。

2.共通言語としてのエネルギー

2-1 30人の奴隷

物理学的視点で人間活動を捉える 重要
 栄養・電気等の動力 etc → 現代人1人が一日に使う総エネルギーを数字で表せる。

2-2 時代格差と地域格差

ヒトが生存に最低必要なエネルギー量はほぼ一定。(※エネルギー = 食料接種・家事活動・商業・農業・工業・輸送など)
しかしエネルギー消費は時代・場所によって大きく異なるのが現状。
アウストラロピテクスから現代アメリカ人に至るまで、右肩上がりの上昇を続ける。

このエネルギー利用の多寡は、工業化や経済発展の度合いを反映している。いいかえれば先進国は過剰なまでにエネルギーを利用し、「奴隷」を使った生活を送っている。一方で、途上国の中には、十分なエネルギーを消費されない=栄養不足も生じているというのが現代世界なのである。

3.エネルギー循環の人体と社会

3-1 代謝とダイエット

ヒトの行動 → エネルギーの摂取と消費(ともに数値化できる
エネルギー収支の観点重要!
  1カロリー=1gの水の温度を1度上昇させるのに必要な熱量
  代謝とは 食べることを通して外部から取り入れた物質をもとに身体がエネルギーを生産し、利用するために物質を変えていく過程のこと。 

3-2 社会の中のエネルギーの変換

エネルギー保存の法則
  エネルギーの起源 → 太陽
  太陽からのエネルギー量 毎秒41兆カロリー
  他の動物を比べて人間のカロリー消費量は群を抜いて高い

4.エネルギーの最大消費の起源と石油文明

4-1 エネルギー生産技術としての農業

農業・牧畜 → 野生の再生産の過程から切り離されている
        ヒトの介入なしには存在しない系を創り出した
        エネルギー利用の質・量を根本的に変えた
           ↓
独自のエネルギー拡散のしくみ

人間の技術 → すでに存在している多様な物質循環の中から、ヒトの生存にとって好ましい特定の流れを見出し、それを強化あるいは拡張するように働きかけること。

運んで移動する行動
人間そのものの道具化(背負う・頭にのせる)→
道具の人間化(身体の延長となる道具:ブーメラン・農機具)→
脱人間化(機械化)

植物・動物・無生物の物質循環から生まれるエネルギーを利用
  ↓
動力源の拡張

4-2 蒸気機関の発達と石油文明

蒸気機関 → 従来になかったしくみ 新たな動力エネルギー
移動・運搬能力の飛躍的拡大
石油(鉱物資源)←熱源以外の使用法の発見 動力
       鉱物に保存されたエネルギーを取り出し利用する技の獲得
           ↓ 
       自動車・飛行機の発明
       プラスチック製品の誕生       

5.エネルギーと文化

レスリー・ホワイト
  文化=進化
  エネルギー消費を量的に分析 
    → 社会の発達段階を科学的に把握しようとした
  「エネルギー消費量の増加=社会の進化」というスタンス
    → 欠点:過度に物質主義的なこと
       ↓ 
しかし今、この人を再評価しよう!

「文化とはエネルギー変換における特定の組織化であり、象徴化に依存する」
彼は、文化を熱力学体系に関連させて理解することの大切さを主張している。すなわちヒトの世界には、エネルギーの流れがあるという認識から出発する。エネルギー変換を行う手段として道具があり、その結果、エネルギーの文化的表現が人間のつくりだすものと考えるのである。したがって、文化システムの差異とは、エネルギーを動力化する仕組みの違いに還元して説明できると考える。ゆえにエネルギーの動力化を量的に把握し、その上で消費(支出)を年間一人当たりで換算し、量的に表現できると主張する。物質循環を含めてヒトの社会の物質的基盤に接近する方法は伝統と工業化をエネルギー消費の観点から連続的に捉えるという点も着目していいだろう。

【引用文献】

【もっと学びたい人のために】

日本語訳の存在しないレスリー・ホワイトの文献 笑

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