デジタル革命を、アナログなコンサルタントがまとめてみます(2/5)
(2019年8月17日掲載、https://kuroshiohr.com/2250/より転載)
前回のブログで、デジタルの進歩は;
・短縮・省略系
・情報記録系
・自動改善系
で、それぞれがシステム化(プラットフォーム化)され、つながることでさらに進化していくことだと、まとめてみました。
今回のブログでは、 ②デジタルの「進歩」で生まれる、新しいビジネスは何か?について考えたいと思います。
②デジタルの「進歩」で生まれる新ビジネスと、市場へのインパクトは何か?
デジタルの冠が付く商品・ビジネスの羅列にならないよう、新ビジネスをいくつかのカテゴリーに分けてみました。
けっこう頑張って集約したつもりですが、7カテゴリーは出てきました。
それぞれのカテゴリーを、市場へのインパクトと併せて説明していきます。
1) プラットフォームを市場にするビジネス
別に回し者ではないのですが、またまたAmazonからスタート。
基本は、「いちば」の場所貸しや決済の便宜を図ることで賃料を店子からもらうビジネス。
ビジネスの形式についてはこれで十分でしょう。
重要なのは、市場全体に与えるインパクト。
一つ目のインパクトは、参加者の増大です。
今までコストが障壁となって消費者マーケットにアクセスできなかった小企業や個人が、市場に参入できるようになりました。
より面白いと思うインパクトは、権威に並ぶように増大した「みんな」の信任の重要度です。
ここでの権威というのは、例えばパナソニックやソニーのような有名で信頼できる企業のブランドと考えれば良いかなと思います。
一方で「みんな」の信任というのは、Amazonやホテル検索サイトなどでの星の数や、評価コメントです。
強力なブランドの力はまだまだ続くでしょうが、無名な企業、個人でも信任、星の数を稼げれば同等の信頼度を得られる。
これは参加者を増加させる要因として、コストの縮小と並ぶものだと思います。
逆に強いブランドを持つ企業の製品であっても、「みんな」の信任を得られなければ、なかなか売れなくなっていくでしょう。
ちなみに理解できていない部分も多いので、ここで簡単に触れるだけにしますが、デジタルの領域で「みんな」の信任に最も頼ったビジネスは、ビットコイン、仮想通貨なのかなと思います。
国家という権威を後ろ盾にしたリアルな通貨に対して、「みんな」の信任を後ろ盾にするビットコイン、仮想通貨。
Facebookのリブラに対する各国中央銀行の警戒感は、良し・悪しの判断はできないものの、国家の権威自体に対抗しうる大きなパワーを持ったものという認識の表れだと思います。
2) 情報を「売り」にするビジネス
情報系プラットフォームでは大量のデータが集まるわけですから、当然、情報を売るビジネスが成立します。
まず例に挙げるとすれば、医療の世界。
症例等の医療データが、MRI等を使った詳細な画像込みで集まっていきます。
データ分析を通じたより正確な症例情報に対するニーズは高いはずです。
たとえ利益が出なかったとしても、医療の進歩に大きく貢献することになります。
医療データのように、データ自体の価値によってビジネスが成り立つケースもありますが、より複雑なビジネスモデルも。
代表的なのが、GoogleやFacebook。
大きな収入源は、広告。
そのビジネスを成り立たせているのが大量のデータです。
そこで集まってくるデータ自体は玉石混合の感はあります。
が、とにかく大量のデータが集まって人が集まることが「売り」になり、広告媒体として機能しています。
医療データでも、GoogleやFacebookでも重要なことは、利用者が無料で自ら情報を提供してくれることです。
逆に言うと、無料でデータを提供してくれるようなビジネスモデルでないと成り立たないと思います。
さらに、同じビジネスモデルの中での、チャンピオンであり続ける必要があります。
10年ちょっと前には、Facebookと同様のSNSはたくさん出てきましたが、今は少数のプレイヤーだけに淘汰されてきているように見えます。
3) リースビジネス / アフターケアビジネス
情報記録系プラットフォームの「物の追跡機能(IoT)」を最大限活用したビジネスが、これでしょう。
きっちりと追加ができるので、リースで起こる紛失・盗難リスクが極端に小さくなります。
例えば、ダイムラーのCar2goは、乗り捨て自由のカーシェアリングサービス。
これまでのレンタカービジネスのように、決められた場所に返さないといけないビジネスモデルより、使用者の利便性は飛躍的に上がります。
また、製品を販売後に、使用状況を追跡しながら必要なアフターケアを提案するようなビジネスモデルもあります。
過去、色々なところで取り上げられている「コマツのショベルカー」などはまさにこのビジネスモデルです。
修理工場から遠く離れた工事現場で故障前に必要なケアが受けられるのであれば、顧客にとってもおそらく大きなベネフィットでしょう。
4) ロングテールマーケティング
ロングテールマーケティングは、新しいビジネスであり、なおかつ新しいビジネスのやり方(事業プロセスの革新)でもあります。
ロングテールマーケティングは、個々人の消費者行動から「潜在的にほしそうな商品を探し出し、提案する」というマーケティング。
イメージしやすいのはAmazonの「お客様におすすめ」などでしょう。
また、アフターケアビジネスも、このマーケティング手法をどれだけうまく活用できるかが、成功へのカギになります。
バックボーンとなるのは、消費行動パターンの膨大なデータの解析と、潜在的ニーズに合致する膨大な製品のデータベースの組み合わせという、「自動改善系」と「情報記録系」のプラットフォームです。
これにより市場にどのようなインパクトがあるか?
ちょっと飛躍も入るかもしれませんが、まとめてみます。
最初のインパクトは、消費者が「あるモノで我慢する」ことを止め、「自分向けの商品」への欲求が高まっていくことです。
この考え方の変化によって、さらに3つのインパクトがもたらされると思います。
1つ目は、セミカスタマイズ商品の増加です。
誰にでも「当たる」商品の開発は、消費者のニーズが多様化してしまうと、難しくなります。
そこで、おそらく増えていくのが、セミカスタマイズ商品。
基本部分が同じでも、スペックを色々選べたり、オプションで付けられる機能を選べたりすることで、幅広く対応できるようにするわけです。
その中でも特に進んだ商品が、カスタマイズするのが、購入後の消費者自身になるものです。
その端的な例が、iPhoneです。
iPhone自体は一緒ですが、ほしいアプリケーションをダウンロードすることで自分用のiPhoneに仕立てていくわけです。
2つ目は、マスプロダクションから多品種中量生産への移行です。
市場への参加の増加に対抗するためには、大企業は消費者セグメントごとに、本当に欲しいものを提供する必要が出てきます。
また、中小企業や個人であったとしても、消費者に飽きられないよう新たな商品を出し続ける必要があります。
この観点で言えば、将来的なロングテールマーケティングの価値は、短いスパンで消費者ニーズを次々に商品化していくことにあるかもしれません。
現時点では既存商品から「自分向け商品」を紹介してくれるところに留まっていますが。
3つ目は今までなかった企業との提携です。
ロングテールマーケティングでのデータ解析がより高度になれば、顧客、消費者自身が気づいていないニーズを、次々発見していくことになるでしょう。
そのニーズを満たすためには、自分たちの事業・技術から遠い事業・技術と結んでいく必要性が、おそらく高まります。
そのためには、これまで以上に、世界中の企業が持つ事業、技術をリサーチし、提携するための交渉をしていくことが必要になってきます。
シリコンバレーで、大企業が出先事務所を置いたり、ベンチャーキャピタルが積極的にシリコンバレー企業とそれら大企業を結びつけるビジネスをしているのも、その証左ではないかと思います。
なお提携の仕方は、技術提供や共同開発、場合によってはM&Aなど様々でしょう。
4つ目まで来ましたが、一旦ここで切ります。
5つ目からは次回のブログへ。
<参考>
プレジデント経営企画研究所編. Why Digital Matters? “なぜ”デジタルなのか: 株式会社プレジデント社, 2018
奥山清行. 100年の価値をデザインする: 株式会社PHP研究所, 2013