試される大地の優しさに触れた北海道10日間の旅 / 網走から釧路へ
2023年10月。こちらのきっぷで北海道一周の旅をしたくろしおです。
いつも長い記事にお付き合い下さり、ありがとうございます。
前回の記事はこちら。
オホーツク海の荒波とたくさんのカモメの歓迎を受け(笑)ご当地グルメも堪能して網走駅に戻って来ました。
前回もお伝えしたとおり、ここからは代行バスに乗って知床斜里駅まで向かいます。
代行バスなので列車とほぼ同じルートを走り、ガイドさんが各駅に乗客がいないか見に行くスタイルです。
駅前までバスが入れないところもあって、停車の度にガイドさんは走って駅に向かっていました。列車の時刻表に合わせて各駅へ行かないといけないのと、知床斜里駅の乗り継ぎ列車に間に合うようにだと思うのですが、とても大変なお仕事だと思いました。
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そんなバスが走ったルートはこちらです。
線路とほぼ平行に車道があるのでバスからもオホーツク海が見渡せます。
知床斜里駅に向かって順調よく進んで行くなかでも車内の様子を気にかけて下さるガイドさんが、虹が見えますね。と教えてくれた。
そんな眺めの中、こちらの駅に到着。
この北浜駅の目の前はオホーツク海。隣にある展望デッキ(下段写真奥)は、冬の風物詩である流氷を眺めることができるスポットとなっています。
続いて次の駅である「止別」にやって来ました。さてこちらの駅名はなんて読むでしょう?
『止別』と書いて『やむべつ』と読みます。
この駅名もアイヌ語由来なのですが同じ漢字表記なのに、駅は「やむべつ」と読み、地名は「やんべつ」と読みます。
アイヌ語で「ヤム」が冷たい、「ベツ」は川を意味するのだそうで、オホーツク海に向かって駅の西側に止別川があるのですが直訳すると、“冷たい川川” になっちゃうなぁ(汗)
めちゃくちゃ冷たい川なんだよー!ってアピールしたかったのかな?
調べてみたけどこの川の読みは 「やんべつ川」 「やむべつ川」 両方出てくるのですよね。正式名称はどっちなんだろう?
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ちょっぴり疑問が残ってしまいましたが止別駅と流氷に一番近い北浜駅の写真に写っているのはガイドさんです。風が強くて雨も少し降っていた中、何度もこうして駅に走って見に行ってくれていました。本当にありがとうございました。
運転士さん、ガイドさんのおかげで、バスは無事に知床斜里駅に到着です。
着くとすでに駅員さんがスタンバイしておられて、みなさーんこちらです!停車している列車にお乗り下さい!間もなく出発します!とみんなを誘導してくれます。
とっても綺麗な駅でした。ゆっくり見てみたかったなぁ。そこだけが残念。
こうして列車は、みんなを乗せて出発です。
こちらの座席シートは0系新幹線※で使われていたシートなんだそう。見た目はとても年季が入っていますが座り心地は最高です。
※0系新幹線
私もふかふか座席に着席し釧路に向かいます。
この雨が後に試される大地の始まりになる。
序盤はほぼ定刻通りの運行で、こちらの駅で行き違い停車します。運転士さんに了解を得て列車を撮影するため降りてみました。
そして再び走り出した列車は、ここでも広大な大地の中を縫うように走行していきます。今日も車窓から北海道の一日の終わりを迎えます。もうすぐ太陽が沈む。目に映る景色の全てが特別です。
日が沈み暗くなってくると、列車の窓から見える景色に哀愁がただよってきますが、途中かわいいらしい駅名に出会うと心が和み、和寒(わっさむ)駅もあったなぁと思い出したり。。。
どんな時も、車窓からは目が離せない。
次は緑駅。喫茶店みたいな駅名でいいね。
そしてこの緑駅を過ぎたあたりから、列車は試練を迎えます。
舞散った落ち葉が線路に被さり、そこに雨が降ることにより車輪が滑って前に進まないのです。
ゴゴーッ、ゴーッ。
ゆっくりしたリズムを刻みながらも重くて低いディーゼル音を唸らせますが、列車はなかなか前に進めません。無理をしてスピードを出すと脱輪してしまいます。
運転士さんは、前をしっかり見据えながらも、「すいませんね。車輪が滑っちゃって進まないんですよ。」 と、運転席の反対側後方に立って前面を見ていた私に声をかけてくれました。そのあと小さく 「はぁ…」 と困った様子を見せた運転士さん。だけど眼差しは真剣です。進まない中、線路には鹿がやって来たりして、警笛も鳴らしながら慎重に前へ前へと列車を走らせてくれます。
こうやって様々な試される大地を見せてくれる北海道。
私はただその列車に乗り、旅をしているだけなんだけど、自分も一緒に乗り越えているような感覚になり運転士さんや列車を心の中で応援している自分がいたのでした。
少しづつだけど、列車は各駅に到着して行きます。
そしてようやく、大変だった道のりを経て釧路駅に到着しました。
降りて行く人に、丁寧にありがとうございました。と声をかける運転士さん。1人の乗客が降り際に『鹿?』と聞くと、運転士さんが『落ち葉ですねー』と答えた。乗客はそこでは終わらずに『あー大変だったねぇ』と、フランクなやり取りの中にも労いの言葉をかける会話を見て、心にジーンと来るものを感じたのを覚えています。
なんだか冒険を成し遂げた気分に。私は何もしていないけど…。列車に乗る度に、こんな熱い気持ちにさしてくれる北海道は本当にすごい。
長い難所を走り切り、ホームに降りてもなお感じることができる人の手が繋ぐ列車の旅の風景。
無造作に置かれているけど、列車には無くてはならない行き先表示板。
到着した釧路駅は、ものすごく昭和レトロ。この駅は国鉄時代から変わらない姿なのだそう。
そっか。。。
── 列車がなかなか前に進まなかったのは、時空を超える為だったのかも?そんなはずは到底ないのだけど、間違いなく冒険という名の旅に演出を添えてくれた雨と落ち葉と列車。そこに誘ってくれた運転士。そしてその終着に相応しい雰囲気の釧路駅が私の目の前に。
さらに夜に降り立ったのもそれに拍車がかかります。
下の写真左奥に見えているのは、昔、特急おおぞらに食堂車があった頃、ここから食材を列車に運び入れたりしていたんだそう。
この駅舎の造りが気になったので調べてみたら、釧路駅は日本で唯一残っている『民衆駅※』なんだそうです。
確かに、駅の1階には喫茶店やパン屋さんなどが入っていました。
国鉄時代に地元と共同で建てた建物が、日本ではこの釧路駅のみになったみたいですね。と、言うのも新潟駅の万代口もここと同じ民衆駅だったそうなんです。確かに、東北一周旅の時に立ち寄った万代口は絶賛工事中で、新潟駅はリニューアル途中だったけど、とても綺麗だったこと思い出しました。
また、自分の旅がこうやって繋がっていたことを発見。旅ってほんと素敵。
さぁ、そんなレトロな街、釧路を少し散策します。
旭川に続き、ここ釧路にも素敵な橋があるそうなので行ってみましょう。
幣舞橋です。
帰ってきてから知ったのだけど、北海道の三大橋のひとつとされている橋で、あとの2つは旭川の旭橋と札幌の豊平橋だそうです。旭橋もステキだったもんなぁ。
マンホールも鶴。
色々眺めながら歩いていたら幣舞橋はすぐに着きます。
釧路は霧の街と言われていて、年間を通して霧の発生率が高く、特に6~8月あたりは月の半分は霧が観測されるんですって。その霧の中で見る幣舞橋が幻想的で綺麗なんだそうですよ。
新しいものも、古いものも、そこの地域にしっかり溶け込んでいる北海道。
スポット的に形を変えるのではなく、駅を新しくしたら、そのあたり一帯もすべて一新しているように思います。
新しいから良いのではない。新しくても古くても駅と地域の一体感が、見る人を引きつけるもっとも大事な要素なのかもしれません。
釧路はぜひ滞在して夜の雰囲気も感じてもらいたいです。
続きはまた。
追伸。
みなさんお気づきかもしれませんが、写真内の時計表示がバラバラです。それは釧路駅の造りに魅せられ過ぎて、一度は改札を出て駅を離れていますが、再び駅に戻り改札内に入ったためです。
これもフリーパスだからできたこと。
めちゃくちゃたくさん撮影した中からお気に入りをここで紹介しています。
釧路駅舎やホームはもはや野外美術館のようでした。
くろしお
続きの旅はこちら。