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【随筆/まくらのそうし】 地蜂

 人にもらった地蜂を食べる。

 これは、いわゆる蜂の子というやつで、スズメバチの子なども食べはするが、その中でも地蜂は最高という。

 サバイバル番組で、カブトムシの幼虫などを生でがぶりといくのは真似できないが、蜂の子ならばいけそうだ。

 割った巣ごともらったものの、巣穴から幼虫を摘まみ出す。このとき、ピンセットが便利である。

 中には成虫になりかけ、蛹もあって、見たことのない巣の内側に、なんとも神妙な気分がする。

 これを集めてバターで炒める。

 米を炒めたときのように、薄ら透明であった蜂の子らは、不透明な白に変わる。

 口に入れると、ざらりとした滑らかさがあり、柔らかくはあるのだが、想像よりは弾力もある。

 これが美味いか、美味くないかは、一度食べただけでは分からない。

 けれど、再びの機会に恵まれぬまま、あのときの味を思い出す。

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黒澤伊織@小説
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