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「まあいい。互いが互いを潰し合えば、皇帝の出番が急がれるだけだ」 バケーロが、何のこと…
南都ギュネイの日差しは、呪いの大樹の日陰で暮らしている者にとってはあまりに強く、厳しい…
「大樹…? 僕に話しかけてるのは、君は、呪いの大樹なの?」 「そうよ。呪いの大樹だなん…
どのくらい、気を失っていたんだろうか。 アスランは目をあけると、遥か高い場所にある、…
アスランがまず、向かったのは、厩だった。 ギョクハンの厩は、王宮のそれと比べるとこじ…
それはそう頻繁に起こる出来事ではない。 しかし、もしも、この辺境の地――ネア・クゼイ…
「おい、女。これを食べ終わるまでに、子供らの中から三人、好きなやつを選んでおけ」 ある朝のことだった。 朝食を運んできた兵士が、扉越しにそう言った。 「…なぜですか?」 ラーレは戸惑い、問い返した。兵士が彼女に話しかけるのは、初めてのことだった。嫌な予感が胸をよぎった。 しかし、兵士はそんなラーレを尻目に、吐き捨てるようにこう言った。 「王の命令だ。その三人以外は、ここから出してやる」 「出して…?」 もし、それがこれまでの彼女だったなら、その言葉に心
「大花様、疲れたの?」 カルを編む手を止めたラーレに、小さな緑が声をかけた。 「いいえ…
どうして、いままで気付かなかったのだろう。 いつのまにか、ラーレとアスランは男たちに…
アスランの夢を見るのは、久しぶりだった。 夢の中でアスランは、あの日のようにラーレの…
「一人でニヤニヤしやがって、すべてがうまく行っているとでも言いたげだな、アスラン?」 「…
「サイファ様、そこの結び目、一つ多いよ」 ラーレの顔をのぞきこむようにして、小さなリウ…
王都クゼイを見下ろす、峠の道。 その見晴らしのいい場所で、マクの背中から降り、アスラ…
もうじき、春の花も散り、夏が始まろうというのに、風は冷たく、空は澄んでいる。 そろそろ日も落ちるというのに、ラーレは籠を手に、里の奥から、まだ頭に雪をかぶった山々へと繋がる道を進んだ。 目的は、西向きの高台に群生している、カリヤスという草だった。まるで、落ちていく夕日を吸い込んだような色をした、カリヤスは、それを煮出し、糸や布を染めるのに使うのだ。 カリヤスを摘むのは、里での大切な仕事の一つだ。けれど、それは今すぐに、しなければいけないことではなかった。皆から離