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緑の一族

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あるとき、森に迷い込んだ旅の商人アスランは、そこで不思議な少女たちに出会う——。 二部制王道ファンタジー。
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記事一覧

第二部 第六章 ギョクハンの密約

「まあいい。互いが互いを潰し合えば、皇帝の出番が急がれるだけだ」  バケーロが、何のこと…

第二部 第五章 帝国の企み

 南都ギュネイの日差しは、呪いの大樹の日陰で暮らしている者にとってはあまりに強く、厳しい…

第二部 第四章 大樹とアスラン

 「大樹…? 僕に話しかけてるのは、君は、呪いの大樹なの?」 「そうよ。呪いの大樹だなん…

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第二部 第三章 大樹の底

 どのくらい、気を失っていたんだろうか。  アスランは目をあけると、遥か高い場所にある、…

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第二部 第二章 秘密の外出

 アスランがまず、向かったのは、厩だった。  ギョクハンの厩は、王宮のそれと比べるとこじ…

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第二部 第一章 誇り高きアナトリアの王子

 それはそう頻繁に起こる出来事ではない。  しかし、もしも、この辺境の地――ネア・クゼイ…

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第一部 第十三章 神様のいる場所

  「おい、女。これを食べ終わるまでに、子供らの中から三人、好きなやつを選んでおけ」  ある朝のことだった。  朝食を運んできた兵士が、扉越しにそう言った。 「…なぜですか?」  ラーレは戸惑い、問い返した。兵士が彼女に話しかけるのは、初めてのことだった。嫌な予感が胸をよぎった。  しかし、兵士はそんなラーレを尻目に、吐き捨てるようにこう言った。 「王の命令だ。その三人以外は、ここから出してやる」 「出して…?」  もし、それがこれまでの彼女だったなら、その言葉に心

第一部 第十二章 金の髪飾り

「大花様、疲れたの?」  カルを編む手を止めたラーレに、小さな緑が声をかけた。 「いいえ…

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第一部 第十一章 悪夢

 どうして、いままで気付かなかったのだろう。  いつのまにか、ラーレとアスランは男たちに…

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第一部 第十章 夢

 アスランの夢を見るのは、久しぶりだった。  夢の中でアスランは、あの日のようにラーレの…

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第一部 第九章 ジャンの誘い

「一人でニヤニヤしやがって、すべてがうまく行っているとでも言いたげだな、アスラン?」 「…

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第一部 第八章 月の輝石

「サイファ様、そこの結び目、一つ多いよ」  ラーレの顔をのぞきこむようにして、小さなリウ…

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第一部 第七章 王の都、クゼイ

 王都クゼイを見下ろす、峠の道。  その見晴らしのいい場所で、マクの背中から降り、アスラ…

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第一部 第六章 別れ

 もうじき、春の花も散り、夏が始まろうというのに、風は冷たく、空は澄んでいる。  そろそろ日も落ちるというのに、ラーレは籠を手に、里の奥から、まだ頭に雪をかぶった山々へと繋がる道を進んだ。  目的は、西向きの高台に群生している、カリヤスという草だった。まるで、落ちていく夕日を吸い込んだような色をした、カリヤスは、それを煮出し、糸や布を染めるのに使うのだ。  カリヤスを摘むのは、里での大切な仕事の一つだ。けれど、それは今すぐに、しなければいけないことではなかった。皆から離